外では携帯電話だが、自宅やオフィスに戻ったら内線電話としてFOMAを使える──。ドコモが進めるネットワークIP化によって、2005年にはこんなことが実現するかもしれない。
ドコモは現在のATMを使ったFOMAネットワークを徐々にIP化していく計画だ。3月1日付で「IPコアネットワーク開発部」と「IP無線ネットワーク開発部」の2つを中心に研究開発組織を改変し、IP化を進めている。
2004年にはコアネットワークのパケット交換機(Packet Switch:PS)をIP化し、2005年には回線交換機(Circuit Switch:CS)と共に無線アクセスネットワーク部分(Radio Access Network:RAN)もトランスポート層のIP化を行う予定だ。
FOMAネットワークは、これまで「高品質ながらメニューが限定」(ドコモ)されたATMネットワークをベースとしてきた(2003年9月の記事参照)。これをIPに置き換えていくことで安価かつ柔軟なネットワークを構築していく。
目的はFOMAネットワークの抜本的な経済化だ。特に、現在課題となっている屋内・ビル内の集中トラフィックを安価にカバーするためにIP化に期待している。「屋内をいかに経済的にカバーするか。激安IMCSを実現できないか。まずは屋内をターゲットとする」
RNC〜基地局間をIP化することで、例えば「社内のLANに基地局を接続する」ことも可能になる。試作したIPベースの基地局はイーサネットポートが付いており、これを社内LANに接続。LANとドコモのRNCをIPで接続することで、配線コストなどを節約した“激安IMCS”が実現できる。
さらに社内LAN内に「内線サーバ」を置くことで、社内LAN内の内線システムとしてFOMAを利用することもできる。FOMA〜基地局〜社内LAN〜内線サーバ〜社内LAN〜基地局〜FOMA、という流れだ。基地局〜FOMA間は従来通りのW-CDMA無線ネットワークを使うため、特別なFOMA端末は必要ない。
従来のATMネットワークではこのように内線サーバで折り返す処理が行えなかったが、IPベースのネットワークではアドレスの付け替えなどで柔軟な対応が可能だという。
現状、携帯電話サービスは「通信経路を通信業者が引くのが前提」となっており、ユーザーのLANを使ってドコモのサービスを提供するのは制度上の課題がある。しかし技術的には可能であり、従来企業内の内線システムとして使われることのあったPHSに代わるシステムとしても期待される。
ちなみに、ドコモは無線LANを内蔵したFOMA端末を開発しているが(2003年12月の記事参照)、RANのIP化はあくまでトランスポート層に留まっている。無線部分のIP化は最終目標としては存在しても、現在のところ連携はしていない。現状は2005年に向けて、IPベースの基地局の小型化を進めている。
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