きょうのできごと「お前、電話鳴ってるで」Mobile&Movie 第105回

» 2004年03月26日 05時39分 公開
[本田亜友子,ITmedia]

作品名きょうのできごと(a day on the planet)
監督行定勲
制作年・製作国2003年日本作品

 京都の大学院に進学する正道の引越し祝いに、大学の仲間たちが集まってきました。正道の家へ向かう車を運転しているのは、映画監督志望の中沢。その中沢の恋人の真紀は、お気に入りのスカートが売れてしまったと車の中ですねています。そんな様子を微笑ましく見つめるのは、中沢の幼なじみのけいと。

 正道の家では既に宴会が始まっていました。長髪の西山とメガネの坂本、そしてハンサムなかわちと、メンバーは個性的。中沢、真紀、けいとを迎えた引越祝いの宴会では、中沢と真紀が二人でラブラブ、けいとはお目当てのかわちにベタベタ。ほかの男子は面白くありません。

 まったりとした雰囲気の中、テレビを見始めた坂本は、ビルとビルの間に挟まれて動けなくなってしまった男のニュースに釘付けに。酔っ払った真紀は、西山の長髪を切ってあげると、風呂場に連れて行きます。こうして、正道の一軒家の中でみんなバラバラな行動を始めました。けいとに迫られて絶対絶命のかわちは、正道に助けを求めますが、けいとはなかなか諦めてくれません。

 その頃テレビのニュースは、座礁したクジラの映像に代わっていました。砂浜に打ち上げられた巨大なクジラは、強い印象を皆の心に残します。そのうち、坂本と中沢はテレビゲームに夢中になり、正道は飲み切ってしまったお酒を買いに出掛けていきます。コンビニの帰り道、正道は不思議なルックスの男に声をかけられます。

「あっ」

「ああ。京都に引っ越してきたんだ」

 男は携帯電話を取り出します。ドロドロに変形したスプラッターな携帯に正道は絶句します。こんな奇形な携帯電話は、映画史上見たこともありません。

「友達と燃やし合いして、どっちが使えるか競争してるねん」

 と、豪快に言う男。正道も携帯電話を取り出し、番号を教えます。

「お前、電話鳴ってるで」

タイミングよくかかってきた電話に

「もしもし……」

と出る正道。

「もしもし! それが俺の番号や、気付けよ〜」

 苦笑しつつ、その番号を登録しようとします。

「名前なんやった?」

 正道はこの男の名前を覚えていなかったのです。

「たのむでー、やーまーだー」

 この風変わりな男は、正道の旧友の山田でした。真夜中の街で久しぶりに出会い、意気投合した二人。こんな偶然がいくつも積み重なって、きょうという一日が特別になっていくのです。

 平凡な大学生の日常の出来事が淡々と描かれたストーリー。その中で、携帯電話で恋人と交わす言葉のせつなさと、哀しげなクジラの佇まいが胸に染み入ります。

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