端末に外部メモリスロットが搭載されるようになってから、各メーカーとも家電と携帯電話の連係機能に注力し始めた。多いのはPCやAV機器で録画したテレビ番組を端末側で再生しようという試みだ(2003年10月の記事参照)。
FOMAの900iシリーズは、「F900i」「P900i」「SH900i」「D900i」の4モデルがテレビ番組などをメモリカードに保存して端末上で再生することが可能(1月27日の記事参照)。ほかにもソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ端末の「SO505iS」や「A5404S」、パナソニック モバイルコミュニケーションズの「P505iS」、東芝の「A5504T」が、こうした機能をアピールしている。
DVDレコーダー「DIGA」で録ったテレビ番組をP900iで閲覧できることをウリにしているパナソニック モバイルコミュニケーションズに、具体的な方法とこの機能の位置付けについて聞いた。
テレビ番組を閲覧する側のP900iには、iモーションで使われているファイルフォーマットのMP4形式(2002年12月の記事参照)に加え、ASF形式の動画を閲覧できるプレイヤーが内蔵されている。P900iは動画撮影時に、内蔵メモリに録画するとMP4形式で保存されるが、miniSDへの保存はASFファイルになるので、いずれの形式のファイルも端末内で再生できる仕様になっているのだ。
録画機器側のDVDレコーダー「DIGA」は、録画フォーマットとしてMPEG-2形式とMPEG-4(SD VIDEO規格に準拠したASFファイル)の2つの方式に対応。本体にSDカードスロットが装備され、録画した番組をSDカードにコピーできる。コピーする際にMPEG-4を選ぶと、P900iでも閲覧できるデータをSDに落とせる。
「SDカードにコピーするときに、MPEG-2を選べば『D-snap』で、ASFなら『P900i』で閲覧できる」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ営業企画グループ営業企画チームの野村幸司氏)
DIGAの録画モードには、QVGAサイズで録画される「スーパーファイン」と「ファイン」、QCIFサイズの「ノーマル」と「エコノミー」があり、FOMA側で閲覧できるのは、「ノーマル」と「エコノミー」の2つだ。
品質 | サイズ | フレームレート | ビットレート |
---|---|---|---|
ノーマル | 176×144 | 15fps | 約300Kbps |
エコノミー | 176×144 | 15fps | 約100Kbps |
miniSDに録画した番組をP900iで再生すると、QCIFサイズで表示される。このままだと画面が小さすぎて見づらい感もあるが、拡大再生機能を使えば若干大きいサイズでの表示も可能だ。
録画した番組の閲覧はP505iSやP2102Vでも可能だったが、「エコノミー品質のみの対応だったため、少々見づらかった」と野村氏。「P900iではノーマル品質の動画にも対応したので、閲覧時のクオリティも向上した」
プレイヤーには、任意の位置を指定して途中から再生できる「再生位置指定」機能も用意。「長い動画を閲覧するときに、任意の場所からでも見やすいようにと付いたものだ。
パナソニック モバイルはP2102Vから、SDカードに録画したテレビ番組を端末側で閲覧する仕組みを端末に取り入れ、以降、ハイエンド端末のP505iS、P900iにもこの機能を搭載している。
この機能の位置付けは「家庭でのブロードバンドとモバイル端末を結ぶ役割が一つ、ホームアライアンスのほうで家電と結ぶのが一つ」(野村氏)というように、SDカードを軸とした家電との連携を促進する意味合いが強い。
ただこうした使い方をもっと身近にするには「miniSDの容量を増やすことや、対応機器を増やして価格を下げないといけない。そういった意味では、今はまだ黎明期。可能性が見えているところから、連係機能を乗せていっている段階」(野村氏)というように課題も残されている。
またユーザー側から見た場合、録画に対応する家電として挙げられているのが「DIGA」のみだと、まだまだ敷居が高い。録画した番組をSDカードに落とせる機器が普及途上で少ない上に、対応がうたわれている機器が少ないのでは、なかなか気軽に使おうという気にはなれない。
P900iでは「ASFの仕様に準拠している機器で録画した動画ファイルならP900iで再生可能」だと野村氏はコメントするが、パナソニック製品以外の動作を保証しているわけではない。このあたりは、家電各社と携帯端末メーカーの柔軟な対応が望まれる部分だ。
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