「SH900i」のマルチタスク非対応をどうみるか

» 2004年04月07日 00時01分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 FOMA 900iシリーズの4機種目として登場したのはSH900i(3月22日の記事参照)。カメラ機能には定評のあるシャープ製だけに、発売を待っていた人も多いと思うが、従来のFOMA端末の多くが対応していたマルチタスク機能を備えていないという気になる部分もある(2003年12月の記事参照)。非マルチタスクなSH900iは、果たして本当に不便なのか、検証してみよう。

マルチタスクを押し出していない900iシリーズ

 900iシリーズ以前のFOMA端末の特徴のひとつが、マルチタスク機能だ。組み合せに制限はあるが、複数の機能を並行して利用できるのが特徴。通話中にメールを確認したり、iモード中に受信したメールを即座に確認できるといった50xなどPDCにはない利便性を持っている。

これは第2世代FOMAである「P2102V」。メールの閲覧/メールの作成/iモードアクセス、さらに待ち受け画面が同時に動作している。この状態で音声着信したり、電話帳を使わずに音声発信することもできる

 マルチタスクは「F900i」「N900i」「P900i」でも継承されており、タスク切り換えのためのマルチタスク専用のボタンまで準備されている。

 しかし900iシリーズではマルチタスク機能をあまり前面に打ち出した端末はない。カメラ機能の充実などほかの要素があるからだろうが、マルチタスクが生む利便性がさほど大きくないという現実も見えてきたからではないだろうか。現在はPDCでもiモード中やメール作成中には音声着信が基本的に可能。着信があれば通話を優先し、通話終了後に通話前の状態に戻っていれば十分だろう。

 現実問題として、通話しながらメールを読んだりiモードを利用することは稀だろうし(そもそもハンズフリー環境が必要だ)、マルチタスクの使いこなしには操作もそれなりに手間がかかる。900iシリーズでマルチタスクを大きくアピールしないのは、そんな背景もあるのではないだろうか。

非マルチタスク仕様だが、不便は感じないSH900i

 「SH900i」は、ほかの900iシリーズや2102Vシリーズのようなマルチタスク機能を持たない。このためiモード中、メール作成中にこれらの動作を保持したまま音声発信をすることはできないし、iモード中にメールをちょっと送信……といったこともできない。

 その半面、メニュー構成や操作性はPDCに極めて近いものになった。例えばNEC製のソフトを採用したFOMAの“N”“P”端末はマルチタスクを意識してグループ分けされたメニュー構成になっているが、SH900iは従来のシャープ端末に近い構成だ。キーレイアウトにも大きな変更はなく、SH505i/iSユーザーなら全く違和感なく移行できる。この点は微妙にキーレイアウトが変更された“N”端末、ソフトウェアも大幅に変更された“P”端末とは大きく異なる(3月12日の記事参照)。

左がSH900i、右がP2102Vのメニュー画面。SH900iはPDCとほとんど変更のない、シャープ端末お馴染みのデザイン。P2102Vはマルチタスクに合わせて破線で囲うようにグループ化されている
SH900iのキーレイアウト/機能配置は、SH505i/iSとほぼ同じ。異なるのは最下段のキーのみ

 音声着信、メール受信といった点でも特に不便はない。iモード中でも音声着信が可能だし、iモード中でも音声通話中でもメールはバックグランドで受信してくれる。iモード中はテレビ電話の着信ができないが(発信元には通話中と返る)、これはマルチタスク仕様のFOMA端末でも同様だ。iモードがパケット通信、テレビ電話が回線交換と異なるデータ通信となるので、同時に処理することができないのだろう。

 ちなみにマルチタスク仕様のFOMA端末では、iモード中でもテレビ電話を発信ができる。しかしこれはiモードのパケット通信を1度切断しているため、マルチタスクとはいいがたい部分がある。一定時間内であればiモードで接続しているサイトとのセッションはキープされるので、iモード自体を終了することのデメリットもある。

 少々気になるのは、テレビ電話中のメール着信だ。マルチタスク仕様のFOMA端末ではiモードセンターにメールが届いていることが通知されるが、SH900iでは圏外と同じ扱いになるからだ。テレビ電話もメールも多用する人はこの点には注意がいる。

マルチタスク仕様のFOMAでは、テレビ電話中にもセンターにメールが届いたことを通知してくれる(ビルのマーク)が、SH900iはこの通知を受け取れない

非マルチタスクを十分補えるアシスタントビュー

 SH900iでマルチタスク的な機能を提供してくれるのが「アシスタントビュー」だ。音声通話中、メール読み書き中、iモード中などに利用でき、左最下段にある[VIEW]キーを押すとポップアップメニューが起動する。

 アシスタントビューは情報の読み出しが専門だが、メール/アドレス帳/スケジュール/テキストメモなどを参照し、文字情報をコピーできる。メールの作成中に受信済みのメールを表示して一部を引用したり、音声通話中にメールを閲覧することも可能だ。終話キーを押すだけで、アシスタントビューを呼び出した画面に即座に戻れる。

これがアシスタントビュー。SH900iに保存できる情報はほとんど閲覧できる。メールやアドレス帳も通常と変わらない使い勝手で閲覧できるが、残念ながら返信したり、音声発信することはできない

 特に便利なのはiモード中のメール着信だ。メールはiモード中でもバックグランド受信されるので、アシスタントビューを利用すればiモードを中断することなく、受信したメールが確認できる。そのまま返信こそできないが、非マルチタスク仕様であることを感じさせない使い勝手といえる。

PDCユーザーなら違和感の少ないSH900i、非マルチタスクの課題はiアプリ

 SH900iは、確かにマルチタスク機能を持つほかの900iシリーズ端末に比べると幾分か不便な部分はある。ただしPDCからの乗り換えであれば不便に感じる要素はほとんどないし、操作性はほかの900iシリーズより馴染みやすい。アシスタントビューもマルチタスクよりは使いこなしが容易で実用性も十分高い。

 ただし900iシリーズの目玉機能の1つでもある高度なiアプリ──ゲームをヘビーに楽しみたい人は不満が出るだろう。音声着信やバックグランドでのメール受信は可能だが、iアプリを終了しないと受信したメールの閲覧もできないし、音声通話の発信もできないからだ。マルチタスク機能の評価について、この点がSH900iを選択するか、他の900iシリーズを選択するかの1つの分かれ目になるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年