既報のとおり、KDDI研究所とKDDIはNHK放送技術研究所と共同で、地上デジタル放送のOFDM放送波を受信可能な端末を開発した。2005年に開始される1セグメント放送(1月23日の記事参照)を想定したもの。KDDIはちょうど1年前の2003年5月に地上デジタル向け携帯端末を披露した(2003年5月19日の記事参照)が、そこからさらにきょう体を小型化し、「OFDM通信機能などをフル実装した」(KDDI)ものに仕上げた。
昨年開発した端末は、HTMLブラウザこそ搭載していたものの、放送波は無線LANでエミュレートしたものを受信するなど実機とは程遠いものだった。今回の端末はRF部がOFDMに対応しているほか、コンテンツフォーマットとしてBMLに準拠。GPSチップも装備され、位置情報と放送コンテンツの連動も可能だ。
放送コンテンツ仕様 | ― |
---|---|
ビデオ | MPEG-2 TS |
オーディオ | MPEG-4 Visual Simple Profile |
データ放送 | BML携帯電話プロファイル+KDDI Profile |
ラスタ静止画像 | PNG |
ベクターグラフィックス | SVG |
サウンド | SMAF |
ビデオは、H.264ではなくMPEG-4 Visual Simple Profileをサポート。これは、開発段階でH.264の採用(3月24日の記事参照)が未決定だったためだ。「今後はさらなる小型化に加え、H.264のサポートも行う」(KDDI)。
通信の領域では、KDDI独自の仕様も加えられている。たとえば、サーバ側でユーザープロファイルを扱う機能を備えており、視聴者投票(後述)などに利用できるほか、RTPストリーミングにも対応する。「放送以外に、サーバ側で蓄積した映像をストリーミング受信することも可能」(KDDI)。
なお、端末のテレビ画面は通信センターからSMSをトリガーにして起動させられる。
「端末側で、『このコードが来たらテレビを起動する』と実装しておく。もちろん、テレビをオフにすることも可能。緊急時に自動起動でニュースを流したり、『メジャーリーグの松井の打席の時だけテレビをオンにする』といった使い方が考えられる」(KDDI)
電池寿命は、約2時間。これは地上デジタル放送を連続視聴した場合の数値だが、もちろん視聴中に通信を行えばより短くなる。なお、同様の地上デジタル端末と比較すると、NECの端末が1時間強、三洋の端末が約90分となっている。
今後は商用化に向けた技術的な検証や、コンテンツ面での実験を行う。ただし、将来的に発売される端末の価格やコンテンツプロバイダの詳細は、明かされなかった。
会場では、OFDM送信装置を用意して実際に試験的な放送波を受信するデモが行われた。auのサーバとも通信を行えるため、よく言われる“通信と放送が融合”した未来の携帯電話のかたちをかいま見ることができた。
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