スパニッシュ・アパートメント「君が恋しい。海辺にいるから余計に恋しい」Mobile&Movie 第112回

» 2004年05月14日 11時06分 公開
[本田亜友子,ITmedia]

作品名スパニッシュ・アパートメント(L’ Auberge espagnole)
監督セドリック・クラビッシュ
制作年・製作国2001年フランス作品

 パリの大学を卒業したグザヴィエは父親に薦められて、父親の友人に就職の相談に行きました。そこでグザヴィエはスペインへ留学するよう、助言されます。グザヴィエは、欧州交換留学プログラム“エラスムス計画”を利用して、バルセロナへ行くことを決意します。

 “エラスムス計画”の申請は複雑で時間がかかりましたが、なんとか準備して旅立ちの日を迎えました。空港では、恋人のマルティーヌがグザヴィエと離ればなれになってしまうのを嘆き悲しんでいました。グザヴィエは、一年で帰ってくるからとマルティーヌをなだめ、毅然とした態度で出発ゲートをくぐりました。

 やがてバルセロナに到着し、新しい生活への一歩を進みはじめたグザヴィエ。「まずは住むとろこから」と母の知人の家を訪ねますが、そこはとてもグザヴィエが一年間住めるような部屋ではありませんでした。いい加減な母親の紹介に苛立ちながら、グザヴィエは言葉の通じない場所で、一人部屋探しをすることになってしまいました。

 途方に暮れたグザヴィエは、同じ飛行機に乗っていたフランス人医師の夫婦が

「バルセロナで困った時には頼りにしていいから」

と声をかけてくれたことを思い出します。

 さっそく連絡をとり、部屋が見つかるまでの居候暮らしが始まったのでした。部屋探しは難航し、すべてがうまく進まなくなったグザヴィエ。美しい海辺を訪れたとき、ふとパリの恋人マルティーヌに電話してしまいます。

「君が恋しい。海辺にいるから余計に恋しい」

 マルティーヌも寂しがっている様子。そのかわいらしい声を聞いていると、グザヴィエは今すぐパリに帰りたいと思うのでした。しかし、困難続きのアパートメント探しからやっと開放され、自分の理想の部屋を見つけることができると、グザヴィエの生活は途端に活気づいてきました。

 グザヴィエが住むことになったアパートメントは、自分と同じように“エラスムス計画”でバルセロナに来ているヨーロッパ各地の留学生たちとのルームシェア。イギリス人のウェンディ、イタリア人のアレッサンドロ、ドイツ人のトビアス、デンマーク人のラース、スペイン人のソレダと、多彩な顔ぶれです。

 電話口には各国の“挨拶のしかた”が書かれたメモが張られ、冷蔵庫の使い方ひとつにもお国柄が表れます。アパート内はいつも賑やか、毎日はとてもエキサイティング。大学でもベルギー人美女と親友になったり、フランス人医師の妻アンヌ・ソフィと微妙な関係になったり、グザヴィエの周囲も華やかになり、濃い時間を過ごします。そんな時にマルティーヌから携帯電話に連絡が入ります。

「会いに来る約束よ!」

「お金がないんだ」

「私の誕生日なのに!最悪よ!」

 すっかりマルティーヌの存在を忘れ、スペインでの生活を楽しんでいたグザヴィエ。

「もう信じないわ」

 電話越しに別れを告げられ、やっとマルティーヌの大切さに気付き落ち込みます。そしてすぐに会いにいけない距離を思い知ったのでした。そんなグザヴィエを、アパートの仲間たちはいつもと変わらぬ態度で接してくれました。

 ある時は、ウェンディの恋人がイギリスからやって来たと知り、浮気中だったウェンディの部屋に入れないように仲間同士で携帯電話で連絡して、協力しあったこともありました。バルセロナで暮らした一年間で、スペイン語、スペイン経済、アパートの多国籍な住人とのコミュニケーション、友情、さらには人生についてまで、グザヴィエは多くのものを学んだのでした。

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