2007年以降、3G携帯は原則GPS機能搭載へ

» 2004年05月18日 15時07分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 携帯電話からの110番通報や119番通報が急増しているにもかかわらず、固定電話と違い携帯電話では通報者の位置を特定できないことが問題になっている(2002年1月29日の記事参照)。

 総務省は、「2007年4月以降、携帯電話事業者が新規に提供する第3世代携帯電話端末については、原則としてGPS測位方式による位置情報通知機能に対応する」としている。携帯各社は、緊急通報時にGPSを使って位置を測定、警察や消防などへ通知する機能を端末に搭載する方針だ。

 総務省の情報通信審議会が5月17日に公開した「携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に係わる技術的条件」の報告書案で述べられたもの。

過半数の通報が携帯から

 情報通信審議会の報告書案によると、携帯からの緊急通報が急増しているのが分かる。110番通報の過半数──実に890万件中462万件が携帯発の通報となっている(2002年度)。119番も同様に増加しており、同年、853万件のうち17%に当たる145万件が携帯電話から発信されている。

 携帯からの緊急通報が増えるに従い、問題となるのはレスポンスタイム──通報の受理から警察官などが現場に駆けつけるまでの平均時間だ。

 ここ数年のレスポンスタイムの推移を見ると、携帯からの通報件数が増えるのに歩調を合わせて長くなってきている。2003年度のレスポンスタイムは、全国平均7分17秒(110番通報)。報告書では「過去最悪の数字であり、ここ5年間で約1分半長くなっている」と表現している。

 レスポンスタイム悪化の理由の1つは、“位置特定の難しさ”だ。固定電話からの通報の場合、利用者が住所を知っているほか、電話帳情報のデータベースなどを参照し、システムによる位置特定が可能。ところが携帯電話の場合、位置を特定する仕組みは整備されていないため、駆けつけるべき現場を特定するのに時間がかかる。「携帯事業者のネットワーク上のシステムにより、位置を測定し指令台(緊急通報を受ける機関)に通知する仕組みを導入することが必要である」(報告書より)。

 3年後の2007年まで……と整備を急ぐ背景には、携帯で日本より遅れているといわれる欧米で取り組みが先行していることも無関係ではない。米国では1999年、携帯電話からの緊急通報において位置情報の通知を義務付ける「E911」を導入(2001年9月13日の記事参照)。スケジュールの厳しさやコスト面から、整備は遅れているが、州政府が補助金を交付するなど導入を推進している。欧州でもEUが2000年に、通報者の位置情報を通知する機能に対応するよう、各加盟国が取り組むことを決定している。

各社、3G携帯の緊急時位置情報通知はGPSで

 こうした背景の中で、特に第3位世代携帯電話を提供するNTTドコモ、KDDI、ボーダフォンの各社は、GPSを備え、緊急時に位置情報を通知する機能を持った端末を開発していく方針だ。

 ドコモは「2007年4月を期限として、GPS搭載のFOMA端末の開発を視野に入れている」とコメント。ボーダフォンも「GPSでやるということになっている。報告書案に基づいて検討している」としている。

 KDDIは既にGPS機能を備えた携帯電話を投入済みで、稼働台数は4月末で848万台(同社3G端末内の60%)に達している(5月12日の記事参照)。ただし、現状110番などの緊急通報に連動した位置情報通知機能は備えておらず、2007年に向けて開発に取り組む。

 2007年4月時点でGPS未搭載の3G端末については、基地局の所在地から位置情報を検知したり(セルベース)、複数の基地局を使って精度を上げるなど、代替の測位方式による位置情報通知機能を利用可能にしていく。

 GPSを使った緊急時の位置通報機能を備えた3G端末の普及率について、報告書案では、2009年4月時点で50%、2011年4月時点で90%という目標を掲げている。

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