21グラム「帰る途中だ、何か買って行こうか」Mobile&Movie 第121回

» 2004年07月16日 15時30分 公開
[本田亜友子,ITmedia]

作品名21グラム(21Grams)
監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
制作年・製作国2003年アメリカ作品

 クリスティーナは、夫マイケルとかわいい娘二人と仲良く暮らしていました。ドラッグに依存していた過去から立ち直り、家族の愛に包まれて幸せな日々。しかし、その安らぎを壊す悲しい事件がクリスティーナを襲います。夫と娘たちが交通事故に遭い、突然亡くなってしまったのです。病院に駆けつけた時には、すでに手の施しようのない状態だったマイケル。取り乱しながらもクリスティーナは臓器移植の同意書にサインをしたのです。

 マイケルの心臓を移植することになったのが、大学教授のポールでした。余命数カ月と診断され、後は死を待つばかりで自暴自棄になっていたポールに朗報が届いたのです。献身的に看病してきた妻メアリーとともに、ポールは手術に挑みました。大手術の後、命をとりとめたポールは、メアリーとの間に越えられない壁があることに気付きます。メアリーには感謝していますが、そこにはもう愛はなかったのです。

 ポールは、自分に心臓を提供してきたのが誰なのか突き止めようとします。そして、自分がクリスティーナの夫マイケルの心臓を移植されたことを知ります。ポールはクリスティーナの居所を探し、遠くから見つめ始めます。家族を失い、うつろな瞳のクリスティーナにやがて惹き付けられていくポール。クリスティーナの通うスポーツジムにしばしば足を運び、顔なじみになろうとしました。心臓移植のことは隠したままで。

 家族の死後、クリスティーナは1人で住むには広すぎる家で、再びドラッグに浸るようになっていました。クリスティーナの携帯電話には、交通事故の直前にマイケルが吹き込んだメッセージが今も残っていました。

「帰る途中だ、何か買って行こうか」

 明るいマイケルの声と、遠くで聞こえている娘たちの笑い声。クリスティーナは何度も繰り返し、このメッセージを聞いては泣き崩れていました。そんなクリスティーナの前に突然現われたポール。スポーツジムで顔を合わせ、何度か街で出会い、そのたび優しくふるまうポールにほんの少しずつ、脆くなってしまった感情が溢れ出さないよう慎重に、クリスティーナは心を許していきました。

「携帯の番号を教えておこう」

 ポールからメモを渡されたクリスティーナ。寂しさに耐え切れず、真夜中に電話をかけてしまいます。

「ポール?」

「誰?」

 妻メアリーの近くで眠っていたポール。

「クリスティーナよ。起こしちゃった?」

「構わないよ」

「家に来てくれる?」

「どうした?」

「ただ……できれば来てほしいの」

「すぐ行くよ」

 不機嫌なメアリーを無視して、ポールはクリスティーナに会いにいってしまいます。クリスティーナを放っておけないポール──それは真実の愛なのでしょうか。そして、ポールに夫の心臓が移植されていると知ったとき、クリスティーナはまた傷ついてしまうのでしょうか。

 ポールとクリスティーナに、交通事故を起こしたジャックの人生までが絡み合い、物語は加速していきます。命が消えた瞬間に、人の体が失うという21グラム。この21グラムには、何が込められているのでしょう。

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