作品名 | ロスト・イン・トランスレーション(ロスト・イン・トランスレーション) |
監督 | ソフィア・コッポラ |
制作年・製作国 | 2003年アメリカ作品 |
アメリカからやって来たボブ・ハリスは、ハリウッドでは演技派として知られる俳優。ウィスキーのコマーシャルの撮影のため、数日東京に滞在することになりました。マネージャーも同行せず、1人で仕事の打ち合わせをしますが、通訳を介してもなかなか日本人スタッフとのコミュニケーションが取れず、違和感を募らせます。ハードなスケジュールをこなし、ホテルに戻っても、時差ボケのせいか眠れない夜を過ごすボブ。見下ろす東京の街は眩くて賑やかなのに、ボブの疎外感は増すばかり。
同じホテルには、ボブと時を同じくして東京にやって来たシャーロットも宿泊していました。シャーロットはカメラマンの夫についてきたものの、何もすることがなく、時間をもて余していました。ホテルに戻ってきても、夫は疲れきってすぐに眠ってしまうのです。1人ではないのに、1人でいるより深い孤独を味わっていたのです。
そんな2人が出会ったのは、1度目はホテルのエレベーターの中。そして、ホテルのバー・ラウンジで再び目が合い、言葉を交わしたのでした。異国の地で、眠れない夜を過ごす者同士、心を通い合わせていきます。シャーロットとの語らいでつかの間の安らぎを感じたボブでしたが、また翌日は、日本人スタッフと意志の疎通のできないまま仕事をして、落ち込んでしまいます。そんなボブを励ますかのように、シャーロットから誘いの電話がかかってきます。
「これから友達に会うの。一緒に行かない?」
シャーロットの日本の友人のパーティに合流したボブ。カラオケボックスで熱唱するシャーロットの姿を微笑ましく見守ります。ボブも1曲披露し、東京の夜を楽しみ始めたのでした。帰りのタクシーの中で、遊び疲れて眠ってしまったシャーロット。美しい寝顔を見つめているうちに、シャーロットに惹かれている自分に気付きます。
ボブがホテルの部屋に戻ると、妻からのFAXやメッセージが山のように届いていました。息子の誕生日を忘れてしまったこと、部屋の模様替えに協力しないこと……。家族への罪悪感はありましたが、家族と遠く離れシャーロットと濃密な時間を過ごしたのも事実。東京という街で自分の本当にいるべき場所がどこなのか、分からなくなってしまったのでした。
翌日また仕事に出かけたボブの携帯電話に、アメリカの妻から連絡が入ります。
「今は都合悪い?」
「いつでもOKさ」
妻は模様替えする部屋のカーペットの色を尋ねてきたのでした。
「君に任せる」
妻の声に、シャーロットと過ごした夜がかき消されていくよう。
「自分を見失った……」
シャーロットを思い出し、ふいにそんな言葉を出してしまったボブに、妻は
「カーペットのことよ」
と明るい声で答えます。
「子供たちは元気かい?」
「元気よ。寂しがっているけど。また後で電話するわ」
ボブは、やっと自分の帰るべき場所を見つけたのでした。やがて困難だった仕事もすべて終わり、東京を離れる時間が近付いてきました。別れの挨拶をしたシャーロットを、いとおしく抱きしめたボブ。数日間滞在した東京で出会ったひとときの恋は、永遠の思い出に変わったのでした。
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