CCDからCMOSへ〜変わる携帯カメラ(2/3 ページ)

» 2004年08月05日 17時31分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

CMOSはどうして画質が悪かったのか?

 それでは、どうしてこれまでCMOSセンサーは敬遠されていたのか。CMOSとCCDには、それぞれ構造的なメリット・デメリットが存在する。特に画質に影響を及ぼすのは以下の4つだ。

メリット・デメリット CCD CMOS
スミア あり なし
暗時ノイズ
縦筋ノイズ × 発生
動体ひずみ × 発生

 スミアはCCD特有の現象で、太陽光など明るい光を写した場合に垂直方向に発生する光の筋を指す(2003年9月8日の記事参照)。CCDは受光素子(フォトダイオード)で光を電荷に変換し、その電荷を隣に並んだ転送部でバケツリレー方式で転送していく。このとき転送中に強い光が当たるとスミアが発生してしまう。

 逆にCMOSは電荷を転送せず、すぐに電圧に変更してしまう、読み出しもXY方式なので原理的にスミアは発生しない。構造的にCMOSがCCDに勝るポイントの1つだ。

CCDの構造。光を受けるフォトダイオードと、その電荷を転送していく転送部(CCD)からなる。この転送部に光が当たると、スミアが発生する

スミアの解決法

 CMOSに比べて原理的に画質に優れるCCDだが、特有の欠点としてあるのがスミア。似たようなものに、転送中「バケツから電荷があふれ出て」発生するブルーミングという現象もある。

 CCDには転送方式にさまざまな種類があり、それぞれスミアの起こりやすさが異なる。携帯向けの場合、最もスミアが発生しやすいのがFT(フレームトランスファー)方式。撮像素子と転送用CCDが兼用されており、転送中に強い光の影響を受けやすい。

 三洋電機製の携帯向けCCDモジュールがFT方式を使っており、最新の100万画素モジュールではメカシャッターを採用した(3月2日の記事参照)。CCDが常に光にさらされる電子シャッターと違い、メカシャッターを使えば電荷転送中に光を遮れる。

 最も一般的なCCDの方式がIT(インターライントランスファー)方式。撮像素子のわきに垂直転送デバイスを備える。転送デバイス部分は光が当たらないようにシールドされているが、スミアの発生を完全には防げない。

 FIT(フレームインターライントランスファー)方式のCCDは、電荷を蓄えるメモリ部分を設けて高速な転送を可能にしたもの。CCDでスミア発生が最も抑えられるといわれるが、メモリ部の分サイズも大きく構造も複雑になる。一般的には業務用ビデオカメラなどで使われており、携帯電話ではシャープ製のCCDがFIT方式を採用している。

 暗時ノイズは、真っ黒の被写体を撮影した場合に真っ黒にはならず発生するノイズを指す。「CCDのほうがメリットが大きい。性能がいい点」(金子氏)であり、これが“CCDのほうが感度がいい”という評価につながっている。

 暗時ノイズは受光素子(フォトダイオード)の製造プロセスで差が出る。金子氏によると、真っ暗な場所でもリーク電流が流れてしまうのがノイズの原因。「(半導体の)pn接合部分のほか、酸化膜界面でのリーク電流」が課題だという。

 CCDのほうが性能が良い理由はリーク電流を減らせるためだ。リーク電流が発生する部分にカバーを付けるが、反面「高い電圧が必要」(金子氏)という問題もある。元々、12ボルト〜15ボルトと転送に高い電圧を使うCCDの場合これでもいいが、3Vに満たないCMOSの場合は読み出しが難しくなる。

 東芝の場合、プロセスの改善で「低い電圧でも読めるようにした」(金子氏)ことから暗時ノイズを低減できたという。

 縦筋ノイズはCMOS特有の現象だ。CMOSの場合、受光素子で光から変換した電荷を「電圧にすぐ変換して読み出す。その際にノイズが出る」(金子氏)。縦横の読み出しを選択するMOSスイッチのバラツキにより、縦の筋が生まれる。

 特に「画素数向上に伴ってスイッチング速度が向上した結果、ノイズが出やすくなった」(金子氏)。東芝はプロセスや回路のレイアウトで対処しているという。

 動体ひずみもCMOS特有の現象。カメラを起動してゆらしてみると、CMOSの場合は被写体が妙にゆがんで写るのが分かる。動きのある物体を撮影したときに、先に読み出した画像上部と最後に読み出した画像下部でひずんでしまう。これが動体ひずみだ。

 CCDは面順次読み出しと呼ばれ、すべての受光素子からの情報を同時に読み出すが、CMOSは線順次読み出し。1ラインずつ順に読み出していくため、「1画面を1/15秒で読めば、読み始めと読み終わりで1/15秒の差が出る」(金子氏)。

 CMOSでは構造上動体ひずみを避けることが難しいが、実用上は問題ないと金子氏は見る。読み出し速度が上がればひずみは減るからだ。具体的には、読み出し速度が15分の1秒であれば許容でき、30分の1秒ならば問題ない。これまでCMOSの動体ひずみが目立ったのは、センサー部ではなくデータ処理回路のパフォーマンスが悪く、読み出し速度を上げられなかったためだと金子氏は説明する。

 最近は処理回路のパフォーマンスも向上している。東芝のCMOSセンサーでは、VGAサイズで秒30枚、XGAサイズで秒15枚の処理を達成しており、2Mクラスまでは秒15枚が可能だという。

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