JR東が「Suica携帯」に求める条件とは?Interview(前編)(1/2 ページ)

» 2004年08月18日 20時09分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 FeliCa携帯で、普及へ向けたキラーアプリケーションと目されるのは「Suica」だ。

 KDDIの小野寺正社長は、FeliCa端末投入のタイミングを聞かれ「より多く使われているSuicaが(発売時期を決める)大きな要素だろうと思っている」と話している。KDDIに限らずとも、Suicaが携帯に対応すればFeliCa携帯の利用者が増える――と見る向きは多い。

 それでは、モバイルSuicaを標榜する当のJR東日本は、どのような考えで、どんな準備を重ねているのか。同社鉄道事業本部Suica部の、山田肇次長に聞いた。

photo JR東日本の山田氏

「早期に100万枚」をモバイルSuicaへ

 JR東日本がモバイルSuicaの構想を立てたのは、2000年にまでさかのぼると山田氏は話す。

 「2001年にSuicaのカード自体が出ることは分かっており、“その次”が検討されていた。当時携帯が伸びていたため、ここにICチップを載せてSuicaとして利用できれば、便利だろうと考えた」

 現時点で分かっているモバイルSuicaのスケジュールは、「2005年度の後半」ということだけ(4月13日の記事参照)。明確な日程は決まっていない。その1年後には、「新幹線の指定席券を、携帯にバリューとして書き込む」サービスも開始を目指している。

 もっとも、こちらは「2年後とか、3年後になるかもしれない」と山田氏は慎重な姿勢。「別途サーバを立ち上げ、携帯キャリアのネットワークと接続しなければ、指定席の情報を携帯ICに書き込めない。そのあたりのネットワーク構築に時間がかかる」。

 同社は今後、Suicaを急速にモバイルSuicaに置き換えていく方針のようだ。現状で940万枚流通しているSuicaのうち、「早期に100万枚」をモバイルSuicaに移行させたいという。

Suica携帯に求める“仕様”

 Suicaの機能を携帯にのせるにあたっての課題は何か。1つは、「携帯の表と裏、両面でSuicaを読み取れるようにすること」だという。

 都心の通勤ラッシュ時の混雑ぶりを思い浮かべるまでもなく、駅改札でのSuicaの読み取り精度は重要だ。端末の「正しい面」をかざさないと認識されないのでは、毎日多くのユーザーが改札にひっかかってしまい、通行が滞るおそれがある。

 現状のFeliCa端末では、折りたたみ型の分厚い形状であることも災いしてか、片面でしかFeliCaの読み取りができない。そのため「悩んでいる」と山田氏は苦笑する。

 「現行端末でも対応できるかどうか……。ストレート端末でないとだめとまでは言わないが、なんとか両面で使えるようにしてほしい。ドコモさんにも、技術開発には協力するし、改札機の試験環境なども貸し出すと話している」

 実際に、片面でしか認識されない状況で運用するとどうなるか。実は、JR東日本では2月16日から8月16日にかけて、社員向けにテストを行っている。

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