拡散率【かくさんりつ】

» 2004年09月14日 11時57分 公開
[江戸川,ITmedia]

 拡散率は、CDMAなどのスペクトラム拡散方式の無線通信において、送信データ速度(ビットレート:bit rate)に対する拡散符号速度(チップレート:chip rate)の比を表す。計算式ではチップレート/ビットレートで表される。

 スペクトラム拡散方式では、変調した後の信号に対して、さらにもう一度変調してから空中に送出する。この2度目の変調がいわゆる拡散変調で、このとき使用するのが拡散符号だ。

 拡散符号とは1と-1で構成される擬似的な乱数で、通信を行うたびに生成されるもの。拡散符号の逆数となるチップレートは、例えばCDMA2000では1.228Mcps(帯域:1.25MHz幅)、W-CDMAでは3.8Mcps(帯域:5MHz幅)で拡散を行っている(Chip Per Second)。

 CDMAは送信するデータに拡散符号を掛け合わせ、広帯域に広げる代わりに信号の出力を小さくする。このとき、異なる拡散符合を持った他の利用者のデータも同時に空中に存在するが、個々の出力が小さければ互いの影響を受けにくい。つまり拡散率を大きくすると、相対的に信号の出力が小さくなり、同時に接続できる利用者の数も増える。

 周波数の利用効率を考えた場合、拡散率は大きいに越したことはないが、合成された信号を元に戻す逆拡散の処理が複雑になる。また計算式の通り、当然ながら、1人当たりが利用できるビットレートは下がっていくので、通信品質に影響を及ぼしてしまう。

 拡散率を積極的に変化させることで、一定の通信品質を確保しつつ、多くの利用者を接続させることも不可能ではない。cdmaOneで使われているEVRC(Enhanced Variable Rate Codec)はこの考え方に基づいたもの。具体的にはビットレートを可変とし、あまり会話をしていないときはビットレートを低くするという方法を取っている。ちなみに、拡散率が大きくなれば電波の出力が小さくなり、空中での干渉波の影響は受けにくくなる。

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