専用ケーブル登場で身近になった「PacketWIN」

» 2004年10月01日 16時25分 公開
[坪山博貴,ITmedia]

 KDDIが、2004年夏モデル以降のWIN端末に対応したUSB接続ケーブルを発売した。このケーブルを使うことで、音声端末を使った受信最大2.4Mbpsのインターネット接続が可能になる。発表は夏モデルとほぼ同時に行われていたため、心待ちにしていた人も多いだろう。


W21K/W21S/W21SAで利用できる「USBケーブルWIN」

 第1の魅力は1050円と安価なこと。FOMAと同様、W21K/W21S/W21SAも端末からUSB信号が出力されるようになり、シリアルレベルへの変換機能が不要になった。このため「USBケーブルWIN」はコネクタ形状が専用のUSBケーブルになり、低価格化が図れたわけだ。

 第2の魅力は、WINの音声端末でも受信最大2.4Mbps、送信144Kbps(いずれも理論値)の「PacketWIN」による高速インターネット接続が可能になったこと。「PacketWIN」の利用はこれまでPCカードタイプの「W01K」に限定されていたため(2003年12月1日の記事参照)、WINによる通信が手軽に行えなかったのだ。

 USBケーブルWINの構造は極めてシンプル。中間に回路部などもなく、PC側コネクタ寄りにフェライトコアが巻かれている程度だ。気になるのはケーブル部に結構コシがあるのと、ケーブル長が80センチほどと長いこと。ノートPCで利用が多いことを考えると、もう少し短めでもよかったと思う。

 「USBケーブルWIN」と検証で使った「W21K」。一見、何の変哲もない携帯電話接続用のUSBケーブルだ

 カードタイプの端末や従来のUSBケーブルと比べて、導入時には少々手間がかかる。端末ごとに個別のドライバが用意され、複数のドライバを導入する必要があるからだ。使い始めに1度行えばいいことであり、ドライバインストール自体はほぼオートマッチだが、機種変更時には、再度ドライバを導入することになる。

 USBケーブルWINは、アドレス帳管理ソフト「MySync Suite」(9月3日の記事参照)の公式接続ケーブルでもある。試しに「携快電話10」で使ってみると、特に問題なく利用できた。もっとも携快電話10とUSBケーブルWINの組み合わせは、動作保障の対象外なので注意が必要だ。

実測で700Kbpsオーバーを記録

 WINの夏モデル「W21K」と組み合わせてパフォーマンスをチェックしてみた。PCはPentium-M/1.4GHz搭載の「EpsonDirect EdiCube Note-S」、ISPは、PacketWIN対応の@niftyを利用。KDDIが提供する「パケット通信最適化ツール」でRWINを推奨値に変更してある。計測サイトには「Radish Network Speed Testing」を利用した。

 まずは大型ショッピングセンター内のカフェで試してみた。入り口以外からは電波が届かなそうな場所で、「W21K」のアンテナを収容したまま寝かせておくと、電波状態はアンテナバーが1〜3本を行ったり来たりするような環境だ。ちなみにこの場所ではFOMAもVGSも圏外になっている。

 ここでは受信が最大535.8Kbps、送信が最大92.22Kbpsという結果が出た。ばらつきも大きく、受信速度が100Kbps台になることもあったが、さほど電波状態が良くない場所でも、FOMAやVGSの理論最大値384Kbpsは余裕で越えている。

 最も良かった結果と悪かった結果。この場所では平均として受信が340bps程度になった

 次に街道沿いのファーストフードに移動。ここでは「W21K」のアンテナを収容したままでもアンテナバーは3本で安定している。2面の窓が見通せる席だ。

 ここでは受信で最大735.5Kbpsを記録。送信も105.3Kbpsと100Kbpsを超えた。速度のばらつきも小さく、400Kbpsを割り込むことはなかった。電波状態に通信速度が大きく左右されるのは間違いなさそうだ。

 ここでは最良で受信が700Kbpsを超え、平均も500Kbpsを余裕で超えた。送信は100Kbps前後と安定

 以前カード型の「W01K」で計測したときの最高が750Kbpsだったので、音声端末+USBケーブルでも通信速度は遜色ないといえる。また現時点においてデータ通信速度では、FOMAやVGSに対して明確なアドバンテージを持っていることも再確認できた。

望まれるパケット割引の充実

 WINのデータ通信サービスである「PacketWIN」と競合するのは、FOMAやボーダフォンのVGSになるだろう。auの場合、cdmaOneの時代からデータ通信時のパケット単価は0.1円/パケット(128バイト)と、音声端末単体でのWebサービスやEメール利用より低く抑えられ、割引サービスを利用しない場合には有利だ。

 もっとも、頻繁にPCからのインターネット接続を利用すると、現状の割引サービスでは辛い。「パケット割WINスーパー」では、定額料金7500円で約61Mバイト分の無料通信分が付き、パケット単価も0.015円/パケットまで下がる。しかし、それでも1Mバイトのデータ送受信で約123円の通信料がかかる。

 1Mバイトのデータ送受信がどれくらいかというと、9月29日19時のITmedia Mobileのトップページが約300Kバイト。「どんな端末で視聴するのか?(1セグ放送編)」を閲覧し、再びITmedia Mobileのトップページに戻るともう1Mバイトだ。あと10分の1とまではいわないまでも、半分から3分の1程度までパケット単価を下げてほしいところだ。

 KDDIが無償提供する「パケットカウンター」。リアルタイムで送受信バイト数やパケット単価に応じた料金が表示される。接続してITmedia Mobileのトップページを表示すると、既に300Kバイトの送受信が発生していた

 もちろん競合サービスに対して「PacketWIN」のパケット料金が高いとか、割引サービスが充実していないということではない。むしろFOMAのほうが割高であり、「PacketWIN」より割安感のあるVGSの「データバリューパック」は、データ通信カードのみの対応だ。単に3Gでのデータ通信料金が、PCでのインターネット接続に比べて全体に割高なのだ。

 またWIN端末対応という点では、単体アクセス用の定額サービス「ダブル定額」利用者への配慮もほしい。パケット単価を割り引くなど、「パケット割WIN」を別途契約しなくても、ある程度リーズナブルに利用できるようにしてくれればユーザーとしてはうれしい。

 「ダブル定額」で2100円、「パケット割WINミドル」で4200円と、最低でも基本料金以外に定額料金が6300円もかかるとなると、利用を躊躇するユーザーも多いだろう。

 「PacketWIN」は、「USBケーブルWIN」が登場したことで、より手軽に利用できるようになった。パフォーマンスも現状3G最速であることは間違いない。これを生かすためにも割引サービスの拡充に期待したい。

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