結局、何が視られるのか?(1セグ放送編)1セグ放送&モバイル放送・徹底比較(1/2 ページ)

» 2004年10月02日 03時00分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 1セグ放送で何が視聴できるのか。まだ先のサービスだけに、この問いに答えることは難しい。ただしテレビ放送局がどんなスタンスでいるのかだけは、確認できそうだ。

 東京放送(TBS)は、民放キー局の中でも携帯と地上波番組の連動企画を次々に打ち出すなど(8月27日の記事参照)新しい取り組みに積極的。1セグ放送ではどのようなサービスを考えているのか、同社メディア推進局 デジタル放送企画部の井川泉氏と、コンテンツ事業局の技術本部、技術局開発センター企画開発 大吉なぎさ氏に聞いた。

基本的には、地上波と同じ内容が流れる

 1セグ放送というと、何か携帯向けにカスタマイズされたオリジナル番組が制作されるのか――と想像するユーザーもいるかもしれない。だが、これは間違い。井川氏と大吉氏は「1セグメント放送は、(固定テレビの)補完放送」と強調する。

 「1セグ放送は免許条件で、固定受信と同じ音声サイマルを流すこと、という縛りをかけられている。絵(画面に映っている内容)だけなら差し換えられるが、絵だけ変えるということはありえない」(井川氏)

 あくまでサイマル放送(=ほかの放送サービスで提供される番組を、同じ時間帯に流す)の形態になる。モバイル端末で視聴するとなると、「番組の字幕が小さくて読めない」といった可能性もあるが「字幕スーパーの部分をいちいち差し換えていては、コスト的に見合わないだろう」(同)。細かいカスタマイズも、あまりなさそうだ。

 では、固定受信とはどこが異なるのか。大吉氏は「たとえば番組では、(ルール説明などの)フリップを映すことがある」と例を挙げる。

 「テレビカメラがアップで一定時間フリップを映したとしても、時間の制限もあってすぐほかの場所を映さないといけない。だが、データ放送で絵やテキストを貼り付けて、フリップの内容を表示させ続ける……という利用の仕方はできる」

「アンケートで作った番組なんて、つまらない」

 デジタル放送のメリットはいくつかあるが、中でも「高画質」と「双方向」が取り上げられやすい。画質面は本稿とは別に取り上げるとして、双方向に大きな可能性を感じるユーザーも多いだろう。

 双方向をどう活用するかは、いくつか考えられる。「番組内で視聴者アンケートをとる」「視聴者がクイズに参加する」さらには「視聴者がストーリーを決める」などの試みが考えられる。実際、テレビ朝日は「仮面ライダー龍騎スペシャル」で視聴者に「主人公が戦いを続ける」か「やめる」か投票させた。その上で両方のパターンを用意し、多く支持を集めたほうを放送した。

 もっとも、大吉氏は行き過ぎた双方向性の活用には賛同しかねるようす。

 「放送は(コンテンツを)プッシュするもの。放送がたまたま降ってくるわけで、“押し付け系”だがそこが放送のいいところ。個人個人にカスタマイズして、みんなのアンケートをとって作った放送なんて、絶対につまらない」

 視聴者の意見につられて放送内容を変えるのでなく、構成作家などのプロが考え抜いたエンターテインメントを提供する……というスタンスのようだ。このあたりは、放送局の制作力に対する自信のあらわれと見ることもできる。

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