「ケータイをシンプルにする」とうたうツーカーが、「究極のシンプル携帯」ともいうべき端末を世に問う。ディスプレイなしの「ツーカーS」(10月18日の記事参照)がそれだ。WPC EXPO 2004の京セラブースにあって、異彩を放っている。
会場で、開発を手がけたツーカーセルラー東京のグループ商品統括部、商品企画グループの上杉直仁課長に話を聞くことができた。このような独特の端末が、どのような議論を経て世に登場したのだろうか。
「『シンプルにする』と言い続けていたが、果たしてどんなものがシンプルなのか。割り切って、黒電話のような携帯を実現したらどうか」。上杉氏は、開発のベースとなったコンセプトをこう話す。
「説明書不要、説明しないといけないような機能はとことんなくそう」(同)。いかに新機能を付けるかで競い合う携帯業界にあって、ツーカーSではいかに機能を削ぎ落とせるかが検討された。
既報のとおり、ツーカーSにはディスプレイがない。ディスプレイがないから、電話帳機能もない。発着信履歴も表示されない。待受画面のカスタマイズなど、最初からありえない話。「電話をかける」という機能だけがそこにある。
もっとも、ディスプレイがないとダイヤルの際、「いま自分が何番を押しているか」すら確認できない。これは不便ではないのか。上杉氏はこの問いに「確かに、これまでの携帯の便利さに慣れたユーザーは、不便を感じることもあるだろう」と話す。
「しかしヒアリングの結果、液晶画面があると『漢字やらアルファベットやらがたくさん表示されて、不安になる』と感じるユーザーもいることが分かった」。ツーカーSがターゲットにしているのは主に高齢者だが、彼らの声に耳を傾けると意外なところでとまどっている現状が明らかになったという。
「たとえば、電源の“長押し”ができないユーザーもいる。長く押さなくてはと、30分ほど押し続けている人もいるようだ」
ツーカーSでは、電源ボタンはスライド方式でオン/オフが分かりやすくなっている。「オン」に入っている時が使えるとき。視覚的に、極めて分かりやすい。
発信の操作にも、こだわりが見られる。通常の携帯の場合、発話ボタンを押してから番号をダイヤルするユーザーと、番号を入力してから発信するユーザーに分かれるだろう。ツーカーSでは、まず「通話」(=発話)ボタンを押してから番号を押さなければ発信できない。
これには2つの理由がある。まず1つは、この操作方法が簡易的な「キーロック」の代わりをするということだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.