車と無線通信が手をつなぐ未来〜ITS世界会議の体験ツアー

» 2004年10月22日 04時13分 公開
[江戸川,ITmedia]

 ポートメッセなごや(名古屋国際展示場)で、「ITS世界会議 愛知・名古屋2004」が開催された。学術的討議・技術報告・展示・現場での体験を網羅した、世界最大規模のITS関連イベント。毎年、世界の主要都市で順次開催されている。

 さまざまなイベントが行われる中、インターネットITS協議会の主催する、インターネットITS体験ツアーに参加した。インターネットITS協議会とは、国内のキャリア、自動車メーカー、家電メーカーなどを中心に、2002年10月に発足。インターネットITSの技術開発、実用化、標準化提案などを目的に、NTTドコモなど幹事会社19社を始めとする108社(2004年10月1日現在)で構成されている。

 協議会が注力しているのが、アプリケーションやサービスを想定した基盤作り。「利用者にとって何が便利なのか」にフォーカスし、“具体的にどのようなサービスを提供できるのか”を検討しているという。

本格的な体験ツアー

 体験ツアーには専用のツアーバスが1台と、デモカーが3台用意されている。いずれも車載ルータを搭載し、外部との通信は携帯電話、PHS、無線LANなどが使われる。車内にはインターネットからの情報を取得するためのPCが置かれ、カーナビやIP電話、車載カメラなどと連動する仕組みだ。

 巡回ルートに設定された体験ポイントやサービスは全部で13種。5つのサービスを体験してみた。

  • its-mo NAVI for Auto(いつもナビ)
  • 画像を活用したプローブ情報システム
  • インターネットITS通りの体験<ホットエリア>
  • 運転支援情報提供サービス
  • インターネットITS通りの体験<メッシュネットワーク>

 ゼンリンデータコムとKDDIが提供する「いつもナビ」は、自宅のPCとカーナビを連動させようという試み。自宅で検索した目的地情報をインターネット上に保存し、カーナビのマイフォルダから呼び出す仕組みだ。カーナビ自体も高度化しており、レストランを検索して周辺の駐車場を目的地にセットしたあと、駐車場からレストランまでの地図情報を携帯電話にメール配信するという。

 デンソーが提供するプローブ情報システムは、無線LANのアドホック接続で車車間通信を実現するもの。ほかの車を中継しながら接続するため、間にはさんだ大型車やビルの曲がり角など障害物にも強く、通信可能範囲も広いのが特徴だ。互いの車載カメラと映像をやりとりしながら、先行する(第三者の)車からこの先の渋滞情報を映像として受け取れるなど、リアルタイムな情報入手が可能になる。

 インターネットITS通りというのは名古屋市内の主要商業エリア、栄地区の大津通りを指す。三越や松坂屋などが軒を連ねる一帯には、無線LANのアクセスポイントとワイヤレスルータが設置されている。通りを通行中の車に対して、周辺のショップから静止画や動画、音声などの広告配信を行える。

 この通りは2.4GHz帯のメッシュネットワークが混在したエリアになっており、ワイヤレスルータで各ビルの間を中継している。こうしたエリアを構築することで、例えば企業のインターネット環境を車内から利用することもできる。災害時など携帯電話の回線がつながりにくい場合でも、周囲の光ファイバーを経由することで、搭乗者に避難情報などをプッシュ配信できるという(3月15日の記事参照)

夢のような世界は2007年ごろにやってくる?

 ほかにもガソリンスタンドに入った時点で、車種の情報などがやり取りされ、最適な種類のガソリンやオイル、点検情報などを指示するデモもを披露。また、実際に運行するタクシー会社の全車両を地図上に表示させる実験も行っている。情報が勝手にやり取りされることからプライバシーの問題が気にかかる半面、サービス実現に対する期待感も高まってくる。こうした世界はいつになったらわれわれの目の前に登場するのか。

 協議会の資料によると、まだハードや方式を確定したり、機器の値段を検討するような段階にはない。2004年の重点領域はアプリケーションプラットフォームの検討であり、事業化に向けた実証実験が行われるのはまだ先だ。協議会の幹事会社でもある、モバイルキャストの奥瀬部長は、個人的な意見だとしながら「自動車業界の買い替えサイクルなどを考えると、2007年ころがその時期ではないか」と予測している。

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