周波数の奪い合い〜800MHz、そして1.7GHzの行方は?(1/2 ページ)

» 2004年11月04日 19時44分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 携帯電話の利用拡大に伴い、新たな電波の周波数が割り当てられようとしている。11月4日に総務省で開催された、携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会の出席者はそうそうたる顔ぶれだ。

 ドコモから中村維夫社長、KDDIから小野寺正社長、ソフトバンクBBから孫正義社長、イー・アクセスから千本倖生社長、平成電電から佐藤賢治社長が出席するなど、各社社長が意見を述べた。

 新規周波数である700M/900MHz帯、そして1.7GHz帯をどのように割り当てるか。特に焦点となるのは、2006年にも割り当てられる可能性がある1.7GHz帯だ。2GHz帯よりも周波数が低く、早期に事業が開始できるとあって、各社が注目。さらにソフトバンクからは、既存事業者が利用している800M帯の再配分を求める声も挙がっている(11月4日の記事参照)

周波数帯 状況
700/900MHz 2012年を目処に割当予定
800MHz ドコモ、KDDIが利用中。2012年再編予定
1.5GHz ドコモ、ボーダフォンが利用中。再編予定
1.7GHz 2006年にも新規割当予定
1.9GHz ドコモ、DDIポケット、アステルがPHSに利用中
2GHz ドコモ、ボーダフォン、KDDIが3Gに利用中
2.5GHz ITUで検討中
携帯用周波数(9月30日の記事参照)。新周波数帯を獲得し携帯事業への参入を求める各社と、周波数の逼迫を理由に割当の増加を求める既存事業者が、割当の必要性をアピールした


検討会第1回の総務省資料より。ソフトバンクは「1.7GHzのみの議論に限定すると、事の本質を見誤る。個別の周波数ごとに割当を考えるのではなく、割当可能な周波数すべてを公示し、希望するすべての既存・新規事業者に計画的・公平に割り当てるべき」だとした

 今回は各社の意見陳述のみだったが、これを元に議論する第3回(11月8日開催予定)は、激しい展開が予想される。

ドコモ、KDDI、ボーダフォン〜周波数は足りているか

 各社の論点の1つは、既存事業者に割り当てられている周波数が足りているかどうかだ。

 「2GHz帯の加入者を見るとほとんど使用されていない。(既存事業者は)今の時点では、十分な周波数を持っている」。そう主張するのはイー・アクセスの千本倖生社長。

項目 ドコモ KDDI(au) ボーダフォン
周波数帯域 40MHz 30MHz 40MHz
収容可能最大人数 1440万人 1080万人 1440万人
加入者数 650万人 未公表 26万人
イー・アクセス資料より、2GHz帯の利用状況(10月7日の記事参照)。既存3社に割り当てられている周波数合計232MHzで8400万人加入をまかなっていることから、1MHz当たり36万人として計算。ちなみに、ドコモ資料によると、FOMAとPDCを合わせた周波数利用効率は1MHz当たり45万人を達成しているという

 第3世代携帯電話(3G)への移行が急速に進むドコモはともかく、音声端末を出していないKDDIや(10月28日の記事参照)、わずか26万加入しかないボーダフォンは余裕があるのではないかという意見だ。

 「(周波数を)握りしめて使っていない。さらに欲しがる。それは(与えられた周波数を)使ってから言うことだ」(ソフトバンクBBの孫正義社長)

 「使われていない周波数は、返上し再配分するスキームが必要だ」(イー・アクセスの千本氏)

 「(既存事業者には)需要が増えると確実に周波数が割り当てられる。これはおかしいのではないか。セルを小さくして周波数を再利用するなど、別の考え方を導入してほしい」(平成電電の佐藤賢治社長)

 など、新規参入を目指す各社からは“余っているのだからこれ以上求めるな”という意見が頻出した。

加入者ではなくトラフィック?

 対して、ドコモやKDDIはユーザー数ではなく、総トラフィック(通信されるデータ・音声の合計)が重要になってくるというスタンス。共有財産である周波数は、トラフィックに対して周波数を有効利用できる事業者が使うべきだと話す。

 「周波数の効率的利用に努力していることなどを基準に。ユーザー数ではなく、トラフィックが重要になってくる。これを基準に判断すべき」(KDDIの小野寺正社長)

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