黒字で順調、イー・アクセスが次にすることは?

» 2004年11月12日 00時10分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 イー・アクセスが順調だ。既報のとおり、11月10日に発表した中間期連結決算では39億9500万円の経常利益を計上。これは前年同期比で617.2%増となる。とかく初期投資がかさみがちな通信事業者としては珍しく、早期黒字化、累損一掃を果たしている。

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 11日に行われた記者懇親会には、イー・アクセス幹部が集結。千本倖生社長は「経営として、何かをぶちあげたり、記者にとりあげてもらったり、そういうことではなく……本当にきちっと黒字にしている」と、堅調な歩みを満足そうに振り返った。

黒字が出た、経営も安定している、次に何をする?

 経営が安定しているイー・アクセスだが、変化のスピードが速い通信業界では“現状に甘んじていれば黒字が続く”とは限らない。次の一手は何になるのか。

 千本氏は、「FTTH」という選択肢を否定する。「報道を読むと、(ソフトバンクやKDDIの動向を取り上げ)FTTHに全部行ってしまうような論調だが、それはない」。NTTが2010年までに光ファイバー回線を3000万回線にするとの計画を明かした(11月10日の記事参照)ことにも触れ、「まあ2010年までNTTがあるかどうか……」と痛烈な皮肉を飛ばす。

 イー・アクセスとしては、現状ではFTTHサービスへの参入は状況が悪いと判断する。もちろん検討は続けるが、NTTから安価に回線を借りられるなどの条件が整わない限り、光サービスは始めないようだ。

 最近では、IT企業がプロ野球業界に参入する、あるいは参入を検討する事例が相次いでいる。イー・アクセスが西武ライオンズを買収し、「ソフトバンク・ホークス V.S. イー・アクセス・ライオンズ」という対戦カードが実現することはないのか。

 千本氏は、「体力がない企業が、30億円もの赤字を出す球団を買う。これはバブルだ」と分析する。「それこそ、京セラとか、ドコモとか……新しい事業をやっていて規模の大きいところが参入すべき」。イー・アクセスにその気はないかとの問いには「とんでもない。そういうことに目移りし出したら、経営がおかしくなります」と一笑に付した。

 もっとも、イー・アクセスが積極的に投資する分野もある。1.7GHz帯を利用したモバイルブロードバンド事業がそれだ。種野晴夫COOは、この事業に「数千億円の下のほう」の資金をつぎ込む構えを明かしている。

 「FTTHとモバイルと、天秤にかけるならモバイルのほうが投資効率がいいということ」(エリック・ガンCFO)

 千本氏はまた、幹部たちと「黒字化した今、企業として何をすべきなのか」を議論したと話す。

 出した答えは「配当を出そう」。無配が続いていた同社だが、期末配当予想は1株あたり1000円を出すよう修正した。「普通、こういうベンチャーは配当をなかなかやらないもの。我々は、1株当たりの純利益(当期末予想で5171円85銭)のうち8割を事業の資源にまわし、2割を株主に還元する」。

 「今の株価は9万円程度だから、1%強(が配当される)。いまの普通預金の金利を考えれば、よほど効率がいい」。配当修正の発表以来、多くの投資家からレスポンスがあったのだと胸をはった。

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