新しいメディアの開拓に挑む――地デジラジオ(1/2 ページ)

» 2004年11月19日 11時58分 公開
[中村実里,ITmedia]

 「地上ラジオ放送は、デジタル化によって“モアチャンネル”を目指す。それは、従来のアナログ放送では実現し得ないコンテンツやサービスを提供できる、全く新しいメディアを創り出すことを意味する」

 そう話すのは、文化放送デジタル事業局企画担当 吉田治憲氏だ。

 地上デジタルといえばテレビ放送がよく話題になるが、こちらはアナログからデジタルへの“乗り換え”を目指している。アナログ/デジタルを並行して放送する期間を設け、最終的には2011年にアナログ放送を終了する予定だ。これに対してラジオ放送は、既存のAM/FM/短波のアナログラジオ放送を継続しつつ、さらにデジタルラジオ放送を提供する考え。

 地上デジタルテレビの場合は、アナログとデジタル、あるいは携帯向けの1セグメント放送(1セグ放送)でも同じ番組を流す(=サイマル放送)と決まっている(「特集:1セグ放送&モバイル放送・徹底比較」参照)。一方デジタルラジオ放送では、従来のアナログ放送とは異なる新たな番組づくりが必須。デジタルラジオならではの画期的なメディア、魅力的なサービスの実現に向け、関係者の期待は高まっている。

 地上デジタル放送では、電波の周波数帯域をセグメントという単位で分割して利用する(3月11日の記事参照)。放送事業者らは、テレビで13セグメント、ラジオで1セグメントあるいは3セグメントを与えられ、サービスを提供する予定。

 昨年10月から、デジタルラジオ推進協会の参加各社が、地上デジタルラジオの実用化実験をスタートした(3月3日の記事参照)。東京と大阪地区でVHF第7チャンネルの帯域を使い、合計14チャンネル(東京6、大阪8)が放送されている。

 地上デジタルラジオの本格的な開始は、テレビがアナログ放送で使用しているVHFから、デジタル放送で利用するUHF帯域へ完全に移行してからの2011年以降になる見通し。しかし、実験用の帯域をそのまま使うなどして、スケジュールの前倒しを希望する声も上がっている(11月15日の記事参照)

ラジオ局の新たなビジネスチャンス

 既報の通り、11月11日にKDDIと音声放送事業者6社が披露した、地上デジタルラジオの1セグメント放送サービスのデモでは、KDDIが開発したPDA端末で放送波を受信。CD並の高音質なラジオ放送とともに、静止画像やデータ放送がPDAの画面に映し出された。音声放送を主体としながら、付加価値の高いサービスが提供できる。

Photo 1セグ放送のサービスイメージ(11月11日の記事より抜粋)

 TBSラジオ&コミュニケーションズ技術推進室 兼 編成局編成部の塩山雅昭氏は、「AMラジオの場合は音質面が弱く、例えばFM局のように音楽中心の番組はなかなか難しいなど課題があった」と話す。

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