ワンセグ放送――鍵になるのは、携帯キャリアへの“配慮”(1/2 ページ)

» 2004年11月25日 18時34分 公開
[西正,ITmedia]

ワンセグ放送――まずはサイマルからスタート

 地上波デジタル放送について、NHKと民放各社のサービス・プロファイルが策定された。A、B、Cの3種類に分かれるが、「Aプロファイル」が固定テレビ向け、「Bプロファイル」が(カーナビなどの)移動体向け、「Cプロファイル」が携帯電話向けである。

 このうち注目が集まっているのが、通信機能との融合が図れる「Cプロファイル」だ。放送局側は、携帯画面上部にテレビ放送を流し、下部にデータ放送(BML)を流すことを希望しており、技術仕様上もそういう形で決められている。

 地上波デジタル放送は13セグメントで送られているが、その中で技術的には3種類の変調方式が使えるようになっている。

 もともとは、9セグメントでHDを送り、3セグメントでカーナビなどの移動体に送って、残る1セグメントで携帯電話向けに送られることになっていた。しかし、その後の実験などの結果、移動体でも12セグメントが受けられることから、3セグメントを別に割り当てる必要のないことが明らかになった。

 このため、現在も「Bプロファイル」はほとんど何も書かれていない状態で、「Aプロファイル」、「Cプロファイル」の2種類に集約する形で年内中にまとまり、2005年度中にワンセグ放送の開始が目指されているところである。放送局側の運用規定が定まったところで、受信機メーカーに対し、それが受信できる端末を作ってもらいたいという要望が行われることになる。

 放送局側としてはCプロファイルのワンセグ放送に関し、ユーザーニーズが明確に見えてくるまでは、画面上部では固定受信とのサイマル放送を行い、下部のデータ放送では生活に必要な情報を流して、メディアとしての価値を高めていく方針のようだ。こうなると、当然の結果として、テレビ放送が見られる携帯電話の保有度合いが高まってこないことには、有料課金を見据えた新たなビジネスモデルの打ち出しようはないだろう。

 また、「通信デバイスに放送を流し込むこと」は間違いのない事実なので、双方向性のサービスを描きやすいことはちまたで指摘される通りだ。しかし、携帯機器には携帯電話端末だけでなく、PDAのようなデバイスもあり、必ずしも双方向性のあるサービスの展開は容易ではない。携帯電話で受信することだけを考えて、ワンセグ放送の特長を生かしていくことは難しいと言われるゆえんである。

 加えて、受信環境の問題もある。通信サービスが使えるエリアであるにもかかわらず、テレビ放送(ワンセグ放送)だけが「圏外」になる可能性が十分あるからだ。ビル陰や地下に対する対策をすでに十分進めてきている通信サービスと、こうした対処がまだまだこれからになるワンセグ放送とではその点で大きな開きがある。

 しかし、ユーザーからすれば、そうしたサービスは「使い勝手が悪い」と感じてしまうに違いない。放送局側は、ビル陰対策のようなことまで含めて、コスト対効果の見合うビジネスモデルを確立していく必要がある。

パケット定額化の効果

 携帯電話をここまで広く普及させてきたのは、あくまでも携帯キャリア側の努力によるものだ。それだけに放送局側も、ワンセグ放送もそこに載せていくにあたって、あまり自分たちの要望ばかりを主張するわけにはいかない。

 基本的には、テレビ放送が見られるようになったところで、携帯キャリア側の収入増に直結するわけではない。だから携帯キャリア側ではむしろ、通信サービスの利用が減少するのではないかということへの警戒感が強かったのが事実である。1年半くらい前の調査になるが、携帯電話で安定的にテレビ放送が見られるようになった際の、ユーザーの利用予想時間はほぼ半々だった。こうしたトレードオフが生じると、明らかに通信サービスにとってはマイナスになる。

 ただ、そういう意味では、通信パケットの利用料金定額化が一般的に受け入れられるようになったことは、一歩前進といえるだろう。パケット料金収入への影響が軽微であれば、携帯キャリア側もテレビ放送を受け入れやすくなるからだ。

 とはいえ、通信キャリアが全く警戒感をなくしたかと言えば、決してそうとまでは言い切れない。やはり最大の関心事は「テレビ放送がポータルになっていく」という点にある。

 例えば、データ画面の中で通信サービスのメニューのようなものが流し続けられると、そこに新しい有料サイトができてしまうのと実質的に同じことになる。となれば、ユーザーが通信メニューを使わなくなってしまうことが懸念されるからだ。

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