ほしのこえ「何年かかってもいいから、このメールがノボルくんに届きますように」Mobile&Movie 第139回

» 2004年11月26日 20時26分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名ほしのこえ The voices of a distant star
監督新海誠
制作年・製作国2002年日本作品


 「Mobile&Movie」番外編として今回ご紹介するのは、アニメーション映画「ほしのこえ The voices of a distant star」。この作品は、新海誠監督が脚本・映像・音楽・声優までを務め、自宅のPowerMac G4でほとんど一人で完成させたというもの。25分という短編ですが、宇宙を舞台にした壮大なスケールの遠距離恋愛がせつなく描かれています。主人公のミカコとノボルをつなぐのは、携帯電話のメールのやりとりです。

 2039年地球を出発した有人探査機は、火星のクレーターの中に異文明の遺跡を発見。直後に現れた異生命体によって、探査機は爆破されてしまいます。しかし、火星の遺跡から発見された数々のテクノロジーにより、人類の科学水準は、一気に半世紀以上の飛躍を遂げます。また、地球外生命体が残したと思われるワープポイントを利用し、恒星間航行の手段も手に入れたのでした。

 2047年、異生命体の実態を調べるため1000名以上の選抜メンバーによる調査団が結成されることになりました。その中には、中学3年生のミカコも含まれていました。ミカコは思いを寄せる同級生のノボルに、このことをなかなか打ち明けられずにいました。放課後の教室の静寂、二人乗りの自転車、夕立と夕焼け。最後の夏休みの思い出を作るミカコ。赤く染まった夕暮れの空に、宇宙船が描いた幾筋の飛行機雲を見上げ、ミカコはノボルに告げます。

「私、あれに乗るんだ」

 やがて、やって来たミカコの旅立ちの時。ノボルは高校に進学し、ミカコはパイロットとして訓練を受けることに。頻繁に届いていたメールが、少しずつ時間を空けるようになります。ミカコのメールを待ち続けるノボル。

「教科書の写真では知っていたけど、実物を見てもなんだか信じられない思いだよ」

 宇宙船のコックピットで制服姿のミカコは、ストレートタイプの携帯電話を使い、メールでノボルに気持ちを伝えていました。地球と宇宙空間、長距離恋愛の恋人同士。ミカコが地球から遠ざかるにつれ、メールが到着するまでの時間は長くなってしまうのです。八光年離れたシリウスへのワープを前に、ミカコはノボルへ祈りを込めてメールを送信します。

「何年かかってもいいから、このメールがノボルくんに届きますように」

 このメールが届くのは、8年後。その時のノボルはミカコを待っていてくれるのでしょうか。ミカコとノボルは再会できるのでしょうか? 宇宙空間でのメールのやり取りが可能になる日がいつか来るのかも……。

 さて、そんなオリジナリティ溢れる作品を作り出した新海誠監督の最新作「雲のむこう、約束の場所」が現在公開中。今度の舞台は、日本が南北に分断されたもう一つの戦後の世界。こちらでも叙情的な恋が描かれています。

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