携帯はこうしてPCになっていく(1/3 ページ)

» 2004年12月02日 01時50分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 携帯電話の高機能化が行き着く先は、やはりPCだ。「セミコン・ジャパン 2004」の基調講演で、KDDI 技術統括本部長の伊藤泰彦氏が携帯のPC化について話した。

 “携帯のPC化”が加速しそうだ。何をもって“PC化”というかは難しいが、CPUとメモリのスペックアップが加速していること、そしてアプリケーションプラットフォームが共通化の方向に向かっていることが一つの見方だ。

 伊藤氏は、携帯の進化をハードウェア面から見た場合、大きく3つのポイントがあるとする。

高速化するCPU〜セカンドチップがサポート

 1つ目はチップ──CPUの進化だ。つい数年前まで、携帯には16ビット/数十MHzのCPUが搭載されていたが、現在では数百MHzにまで達している。「(CPUコアは)これまではARM7だったが、今後はARM9。16ビットから32ビットになり動作クロックも上がった」と伊藤氏。

 KDDIが採用しているQualcomm製のチップも、ARM9/150MHzを積む現行の「MSM6500」から、数年後には335MHz以上のクロックで動作するARM11コアに変わっていく予定だ(7月5日の記事参照)。今後も「とにかく高速化したい」と、伊藤氏はCPUの高速化に意欲を見せた。

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KDDIはベースバンドチップとして、米QualcommのMSMチップを採用。現在の1X WIN端末では「MSM6500」が使われている(7月5日の記事参照)


KDDIは端末のチップ構成として、高性能なCPUを載せたベースバンドチップと、専用DSPの組み合わせを取っている。ここ数年、低速なベースバンドチップにアプリケーションプロセッサを組み合わせることが流行したが、コスト面などから構成が変わりつつある(7月26日の記事参照)。ベースバンドの進化に伴い、セカンドチップは専用チップ化が現在のトレンドだ。
「最初はシングルチップを考えていたが、消費電力などを考えると1CPUでは数百MHzのスペックが必要になる」(伊藤氏)ことから外付けDSPとのセットを選択。DSPとしては、ヤマハの音源チップ「MA-5」や、東芝の動画アクセラレータ「T4」などを例として挙げた。2007年度は、マルチコアチップの採用を想定している(7月5日の記事参照)


携帯電話の構造はこうなっている

 au携帯電話の構造を、レイヤー構造と実際のチップ配置からおさらいしておこう。RFチップはアンテナを通じて電波を受発信する。受信された信号はベースバンドチップで変調処理(CDMA変調など)され、OSに渡される。

 ベースバンドチップには、制御用のCPUコア(ARM9)が含まれており、この上でOSが動作している(au端末の場合REX OSというリアルタイムOS【RTOS】)。その上に端末メーカーごとに特化したOEMレイヤーなどが載り、さらにBREWという中間言語を使ったアプリケーションプラットフォームが載せられている。

 メールやWebなどのアプリケーションは、現在OEMレイヤー上で動いており、一般にネイティブアプリケーションと呼ばれる。一部のアプリケーションはBREW上で動作するようになりつつある。


1X WIN端末と思われるau端末の基板の裏と表。800MHz帯に対応したSAWフィルタ(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)が受信用に2つ、送信用に1個搭載されている。SAWフィルタとは、無数の電波の中から必要な信号を取り出すための素子。一般にCDMA端末はダイバーシティ受信を使わないが、auの1X WIN端末ではアンテナ2つ、RFチップ2つを使うダイバーシティ受信を行っている(2月13日の記事参照)。「RFT6120」「RFT6125」はGPSにも対応したQualcomm製のRFチップ。送受信併せて3つ搭載されている。ベースバンドチップはARM9コアを含んだ「MSM6500」

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