目を離してはいけないもの――タクシーのメーターと携帯電話

» 2005年02月25日 13時54分 公開
[IDG Japan]
IDG

 今月、ホテルチェーンの後継者パリス・ヒルトン嬢の携帯電話番号と電子メールアドレスがWebに流出した時、インターネットにはこの事件がどのような経緯で起きたのかをめぐる噂が飛び交った。幾つかの説では、ヒルトン嬢が使っているT-Mobile USAのスマートフォン「Sidekick」のWebインタフェースのバグと、彼女の携帯電話アカウントをハッカーにさらしたと伝えられている先日のT-Mobileネットワークへのハッキングに注目している。

 ある説では、何者かがヒルトン嬢のデジタル「ブラックリスト」を入手した手段について、彼女が紛失した携帯電話を誰かが拾ったのだと唱えている。最近Pointsec Mobile Technologiesが各国のタクシー運転手900人を対象に行った調査によると、タクシーに置き忘れられている携帯電話・モバイルデバイスは推定で1日数千台に上るという。

 Pointsecの調査はロンドン、パリ、シカゴ、シドニーなどの大都市で行われた。その結果は驚くべきもので、モバイルデバイス利用者は大変な率で自分のデバイスを置き忘れていることが示された。

 シカゴの大手タクシー会社の報告では、6カ月間でタクシー内に置き忘れられた携帯電話は387台、タクシー1台当たり約3.4台だった。シカゴ全体のタクシーの数を考えると、6カ月の調査期間中に置き忘れられた携帯電話は推定で8万5619台、ノートPCは4425台、PDAは2万1460台になる。

 ボストンでも携帯電話、ノートPC、PDAの紛失が大きな問題になっている。ほかの忘れ物と同様に、タクシーに置き忘れられたモバイルデバイスはボストン警察タクシー係に届けられるとヒュー・ソラリ担当官。

 「ここには山のように忘れ物が届けられており、頭痛の種になっている」(ソラリ氏)

 携帯電話やPDAを紛失すると持ち主にとって不便なだけではなく、なくしたデバイスに機密情報や電子メールなどの通信記録が含まれていた場合、会社に大損害をもたらすこともあるとセキュリティ専門家は指摘する。

 ヒルトン嬢のデータ流出事件で分かったように、携帯電話には名前と電話番号だけでなくたくさんの情報が格納されている。

 「企業にとって今のキラーアプリケーションはプッシュメールだ。いったんモバイルデバイスへの添付ファイル付きメールをプッシュ配信を始めると、あらゆる種類の情報がモバイルデバイスに送られてくる可能性がある」とPointsecのグローバルマーケティング担当副社長ボブ・エグナー氏は語る。

 企業は、機密情報や競争に関わる情報が紛失した携帯電話の中に添付文書の形で保存されていたり、こうした情報が電子メールから集められる恐れがあることを懸念するべきだと同氏は指摘する。

 Pointsecの調査では、紛失した携帯電話とPDAの大半が持ち主の元に戻ったことが示されている。ストックホルムではタクシーに置き忘れられたPDAの100%、携帯電話の92%が持ち主の元に戻った。シカゴでは、この割合はそれぞれ64%と52%に下がるが、それでも、紛失したデバイスが発見あるいは遺失物として報告されるまで、しばらくの間客席に放置されている可能性を考えると、高い割合と言えるとエグナー氏。

 ボストン警察がこうしたデバイスを持ち主に返そうとする場合、たいていはデバイスの電源を入れてアドレス帳を調べ、持ち主やその知り合いからかかってきた電話を取るとソラリ氏は説明する。

 しかし、たとえ持ち主に返却するためでも、紛失された携帯電話のデータに簡単にアクセスできるということは、セキュリティの緩さを示しているとエグナー氏は指摘する。

 米財務省検察局(シークレットサービス)ほど、モバイルデバイスのもたらす危険を理解している組織はないだろう。同局は最近、T-Mobileをハッキングしたニコラス・ヤコブセン被告に機密文書の一部を盗まれたことに気付いた。同被告はT-Mobileのネットワークにアクセスし、シークレットサービスのピーター・カビチア調査官の携帯電話アカウントを調べた。

 供述書によると、ヤコブセン被告は内部メモや、シークレットサービスが捜査中の犯罪事件に関する、監視対象IMアカウント一覧などの機密情報を含むロシア連邦との相互支援法条約といった貴重な情報を入手した。

 Pointsecなどの企業は、モバイルセキュリティに関わる脅威に対処するための製品を多数市場に投入している。データプライバシー法が厳しくなっていること、モバイル技術を使う従業員が増えていることを考えると、この市場は過熱する一方だろうとモバイルセキュリティを手がけるCredant Technologiesのマーケティング担当副社長イアン・ゴードン氏は語る。

 「モバイルは西部劇のような無法地帯だ」と同氏は語っている。

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