携帯カメラに適したモータは?〜アナログ・デバイセズ、AF用レンズドライバ

» 2005年03月16日 01時57分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 アナログ・デバイセズは3月15日、携帯電話向けのレンズドライバ「AD5398」を発表した。オートフォーカス機構で必要とされるレンズの移動を制御するチップで、光学ズーム機構にも利用できる。

カメラ機器の一般的なブロック図。レンズを動作する各種モーターの制御を行うのがレンズドライバだ

 オートフォーカスや光学ズームなどの、デジタルカメラに必要とされる機能は、携帯電話のカメラでも2Mピクセルを超えたあたりから採用が加速すると、同社は見る。

 オートフォーカス機構の実現には、レンズを前後に移動させるモーター(アクチュエータ)が必要。携帯カメラでは、さまざまな種類のモーターが主役の座を争っている。

 デジタルカメラでは、レンズの移動に主にステッピングモーターを使う。ステッピングモーターとは電流を流すとある角度だけ回転するモーターのこと。しかし、「ステッピングモーターは大きく、高い。携帯用モジュールでは小さなものが必要になる」(アナログ・デバイセズ)ことから、対象をボイスコイルモーターに絞った。

 ボイスコイルモーター(VCM)は、一種のリニアモーターで、ダイナミックスピーカーのコイルを動作させるのと似た仕組みで動く。スピーカーのコイルは、音声を再生する意味でボイスコイルと呼ばれる。ボイスコイルモーターの名もそこから来ている。

 「コスト的にはVCMが一番安い。VCMを使うと最も低コストで小さなものができる」(アナログ・デバイセズ)

 国内の携帯電話では、カシオ計算機がステッピングモーターを、シャープがVCMを使ったオートフォーカス機構を採用している。

VCMを使った携帯カメラ用レンズの断面図。VCMがレンズを前後に駆動してピントを合わせる。スプリングを使うことで、レンズを規定位置に戻す仕組みになっている
モーター種別 ピエゾモーター ボイスコイルモーター DCモーター ステッピングモーター
エネルギー[mJ] 0.7 2.4 6.0 21
スピード[ms] 3 20 40 100
ノイズ - - -
コスト 2.2 2.1 2.8 4.0
アナログ・デバイセズの資料より。レンズ駆動用の各種モーターの特徴。携帯向けでもデジタルカメラと同じステッピングモーターが現在は主流だが、同社はVCMが主流になると見る。スペックだけを見ると、最も高性能なのはピエゾモーターだ

 オートフォーカス機構用のモーターで、今後の普及が期待されているのがピエゾモーター(ピエゾアクチュエータ)だ。ピエゾ素子は、圧電効果で知られ、結晶に圧力を加えると圧力に比例して電圧が発生する。電子ガスライターやマイクロフォン、圧力センサーなどに利用されている。

 ピエゾモーターでは、逆圧電効果を利用する。素子に電圧を加えることで結晶の伸縮が発生することで、レンズを動かすわけだ。移動の位置決めが無限に細かくできること(無限の分解能を持つ)や、高いエネルギー効率を持つこと、また摩耗や劣化が起こらないなどの特徴を持つ。応答性も極めて早い。

 ただし、その制御には課題がある。かけた電圧と伸縮量は1対1に比例(線形)するわけではなく、ヒテリシス曲線と呼ばれる非線形な曲線となってしまう。そのため、制御が非常に難しい。

 「将来はピエゾだが、ピエゾをコントロールするドライバはかなり複雑だ。今はVCMで十分」(アナログ・デバイセズ)

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