WinnyはCD売上を減らさず〜慶應助教授の研究に迫る(2/3 ページ)

» 2005年03月29日 22時24分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 グラフから明らかなのは、CD売上とダウンロード数には明確な正の相関があること。ただし、「ダウンロード数が多いから売上が伸びた」のか「売上が伸びたからダウンロード数が伸びた」のか、その因果関係までは分からない。

 そこで、プロットされた各点について「ダウンロード数がCD売上にどう影響をおよぼすか」の直線(式)と、「CD売上がどうダウンロード数に影響するか」の直線(式)が存在すると考える。2つの直線の交点として、図の各点が存在するという理屈だ。

 気になるのは、やはり前者。この直線(式)が右下がりになる(係数が負の値になる)なら、ダウンロード数が増えるほどCD売上が減ることになり、「P2Pが音楽業界に被害を与えている」ことになる。

Photo Y=aX+bの形式の2式を推定して、これを求めていく

 それでは、実際はどうだったか。結論から先にいえば、ダウンロード数がCD売上にどう影響数するかを示す直線(式)の傾きは右上がりになった。ダウンロードが増えるほど、CD売上が減るどころか、むしろ若干増えることになる。少なくとも、WinnyがCD売上に悪影響をおよぼしていないことになる。

 ここまでが研究の結果。田中氏はここから「なぜ、このような結果が出たのか」という考察を行う。

Photo 係数は、ネットユーザーが好んでダウンロードするファイル群(アニメ・ゲームジャンルなど)とその逆のファイル群(演歌・ファミリージャンルなど)の平均値を算出し、2点を結ぶことで求められる。結果、導き出された係数は「0.465」となった
Photo ちなみに、「CD売上がダウンロード数に影響する式」の係数も正の数(1.50)になった(上図参照)
次ページ:なぜ、Winnyで多くダウンロードされた音楽のCD売上が落ちないのか?

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