1チップMSX、ケータイ用MSXアプリ発売へ――MSX WORLD 2005(1/2 ページ)

» 2005年05月09日 17時26分 公開
[池紀彦,ITmedia]

 MSX関連の商標・権利などを管理する任意団体「MSXアソシエーション」およびアスキーは5月8日、秋葉原ダイビル「秋葉原コンベンションホール」にて「MSX WORLD 2005」を開催した。

 会場ではついに製品化された1チップMSXに関する発表を中心に、会場内最奥部公演会場にて各種発表やプレゼンテーションが、手前には各メーカーやMSXユーザーがブースを並び、製品の販売や実演デモ、貴重な資料の展示などが行われた。

photo 秋葉原コンベンションホールで開催された「MSX WORLD 2005」

 「MSX」とは、1983年に登場した8ビットパソコンの規格で、かのマイクロソフトとアスキーが規格を策定、それに準拠した製品を各メーカーが開発し販売するというビジネスモデルで登場したパソコン製品群の総称だ。

 OS開発やハードの規格の策定のみを行い、実際の製品は各メーカーに任せるという今日のマイクロソフトを築き上げた方法とほぼ同じビジネスモデルを20年以上前より行っていたことからも分かる通り、MSX規格のパソコンは当時、世界中で開発・販売され、世界レベルでの普及台数はかなりのものになった。

 その後、NECやシャープといった他社製パソコンの性能向上に対抗すべくMSXも新たな機能を追加した「MSX2」や「MSX2+」「MSX TurboR」と新規格を策定していったが、16ビットマシン時代の波に埋もれ、製品を発売するメーカーが減っていった。そして1991年発売の松下製モデルを最後にMSX製品は市場から姿を消した。

 ここまではよくあるパソコン昔話。そうしたMSX製品が姿を消してから約10年、新世紀を迎えた2000年あたりからMSXという言葉が再度聞かれるようになってきた。その間もユーザーレベルでのハードやソフトの開発は続けられていたが、2000年に行われたMSXのイベント「MSX電遊ランド2000」にて、西和彦氏(MSXアソシエーション会長 1991年当時アスキー代表取締役社長 *初出時、西氏の肩書きが異なっておりました。正しくは上記の通りです。お詫びして訂正いたします)はWindows上で動作する公式MSXエミュレータの発表、とMSXの1チップ化を宣言し、搭載機器を2003年に販売したい意向を示して話題を呼んだ。

 2002年には実際にアスキーから一度休刊したMSX専門誌「MSX Magazine」が復刊し、WindowsやPocket PC上で動作するMSXエミュレータ「MSX PLAYer」を付録として頒布するなど、話題を集めたことは記憶に新しい。

 しかし再度1チップMSXの話が聞かれなくなってしまい、盛り上がるかのように見えたMSXの炎は再び鎮火されつつあるのかと個人的には思っていた。ところが、2004年10月に行われた日本アルテラが「ALTERA PLD WORLD 2004」上においてついに1チップMSXの試作品を公開し、今回、何度か浮き沈みを繰り返していたMSXのハードウェアの復活がやっと現実味を帯びてきたのである。

1チップMSXは5月中旬より予約受け付け開始――価格は1万9800円

 最も注目度の高い1チップMSXの製品に関しては、西和彦氏の基調講演内でも大いに語られたほか、会場内のあちこちで実際に動作する試作機の展示を行っていた。

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photo 展示されていた試作版の1チップMSX。ディスプレイには懐かしのMSXゲームが正常に動作していた。これは試作機のためMSX用ROMスロットを2基備えているが、実際の製品では1スロットになる

 1チップMSXは、5月中旬より予約受け付けのためのWebサイトを開設されるという。仕様としては、ボードに日本アルテラ製PLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)のFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)「Cyclone EP1C12Q240C8」を搭載する。

 PLDとは、ソフトウエアで回路を設計することが可能なプロセッサ全般を指す。FPGAはPLDの1種でSRAM上に回路を展開し、電源起動時に毎回回路データをロードする仕組みとなっている。Cycloneでは、VHDL(Very High-speed integrated circuit Hard-ware Description Language)というハードウェア記述言語を用いて内部を書き換えることで、ハードウェアのエミュレーションを行うことが可能なもので、今回の1チップMSXでは、MSX規格の初期モデルとなる「MSX1」相当のハードウエアをエミュレーションで再現する。

 そのほかに、MSX用のROMカートリッジスロットを1基、メディアスロットとしてSD/MMCカードスロットを1基、キーボード接続用のPS/2ポート、画面出力端子としてコンポジットないしVGA端子を備えており、家庭用TVへの出力も可能。音声出力はモノラルだが、将来の拡張用としてUSB端子や、FPGAと接続し内部のVHDLデータの入出力を行う専用端子も搭載される。

 今回の1チップMSXの開発を請け負ったのは「似非職人工房」という個人ユーザーによるグループだ。同グループは1995年にMSX用SCSIインターフェース「MEGA-SCSI」を製品化するなど、MSX製品が生産終了した後も製品開発を続けている。

photo 「似非職人工房」による1チップMSXに至るまでの各試作機

 今回の製品がMSX1までの機能しか実装していない点については、時間の都合でVHDLの最適化がまだ完全でないこと、一部MSX2用ソフトの動作に問題があったことを原因として挙げており、MSX2用のVHDL開発は現在順調に進行しているという。

 価格は税別で1万9800円。今回の展示されていたものはすべて基板剥き出しの状態だったが、実製品には簡易ケースが付属するほか、電源用のACアダプタやFPGAの開発ツール気となどが付属するため、知識のあるユーザーなら、自分で内部を改良してアップグレードすることも可能となるようだ。

 ちなみに必要最低注文数は5000台。予約開始から2か月間で5000台の予約が集まらない場合には、残念ながら販売は中止となってしまうという。

 ただし公式の約束ではないものの、この発表の途中で西氏が壇上に詰め寄り激昂。その場で「5000台の予約数に満たなかった場合には、自分のポケットマネーで不足分を全部買ってでも発売してみせる!」と宣言をしたので、予約さえしておけば入手できる可能性は高そうだ。実機発送開始は2005年秋以降となっている。

 なおFPGAの書き換えを行うためのFPGA入出力用ケーブルは付属されない。これに関しては、現在発売検討中である上位規格「MSX2」にアップグレードする「MSX2アップグレードキット」に付属する予定としている。

ケータイでMSXが動作する携帯用MSXエミュレータも登場

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