「3Mまでのセンサーならば、ベストクオリティの画像を提供できると自負している」
米カリフォルニア州のベンチャー企業Nethra Imagingは、画質にこだわった携帯カメラ向け画像処理チップを開発、市場参入を発表した。
Nethraは、モバイル機器向けグラフィックスチップを開発していたMediaQ(2003年5月28日の記事参照)(現在はNVIDIAが買収)のメンバーを中心に2004年に設立されたファブレスのチップベンダーだ。Nethraとはサンスクリット語で“目”の意味を持つ。
同社の強みは独自の画像処理アルゴリズムにある。「処理パイプラインなどは独自開発。特に画質にこだわった」(ラメッシュ・シンCEO兼社長)
アルゴリズムをハードワイヤリング(専用設計回路)化することで、低消費電力と高速処理を実現。内蔵したARM7コアで、オートフォーカスコントロールや、絞りの調整、ホワイトバランス調整などを行う。
画像処理に限らず、各種の演算処理を行う方法は大きく3種類ある。ARMコアなどのCPUを使ってソフト処理する、数値演算処理に特化したプロセッサであるDSPを使う、特定の処理専用に作られた専用回路ASICを使うかだ。
最も汎用性が高くさまざまな処理に活用できるCPUは、同じ処理を行うなら高いクロック周波数が必要になり、消費電力がかさむ。逆に専用回路であるASICは汎用性が低いが低消費電力で高速に処理が可能だ。DSPはほぼその中間にあたる。
Nethraのチップは、イメージセンサーからの信号を受け取る独立した専用回路ASICとなる。
CMOSセンサーでは、CCDに比べて画像処理回路の統合が行いやすく、一体化が進みつつある。統合することでコストを抑えられるというメリットもある(上記画面左)。
一方で、Qualcommのベースバンドチップや、TIのOMAP、ルネサスのSH-Mobileなどアプリケーションプロセッサは画像処理を行うことも可能だ。コスト削減などの目的でイメージセンサーから直接信号を受け取って処理させる端末も出てきている(上記画面中央)。
ここにきてNethraが投入する専用ASIC(上記画面右)の利点はどこにあるのか。
「QualcommやTIの仕組みは意味があることだと思う。ただし現時点で、彼らのモデルが我々のようなクオリティの画質を提供できるかというとノーだ」(シン氏)
画像処理チップの専業メーカーであることを生かして、クオリティの高さで独自性を出していくことを狙う。コストの面でも、優位性を訴える。
特に日本市場ではCCDがリードしてきた携帯カメラだが、機能向上に伴って今後はCMOSが市場をリードしていく見込みだ(2004年8月5日の記事参照)。既にメガピクセルクラスはCMOSが席捲しつつあり、200万画素クラスのサンプルも出荷が始まっている。
CMOSがもてはやされる理由はコストだ。特殊な製造工程が必要なCCDはコスト高であり、提供できるメーカーも少ない。しかし一方で、一般的にはCCDのほうが画質が高い。
ここでNethraは、CMOS+NethraチップによってCCD並みの画質を得られると主張する。Nethraのチップは1万個ロット時で8ドル。一般的に携帯向けチップとしては高価な設定だが、「CMOSにNethraを足しても、CCDよりも安い」(シン氏)のだという。CMOSを使ったカメラモジュールの価格は15〜20ドル程度。
Nethraチップは、ベースとなる「NI-20x0」シリーズがサンプル出荷済み。300万画素までのCMOS/CCDに対応する。第3四半期には量産出荷に入り、第4四半期には搭載製品が登場する見込みだ。
2005年末には、600万画素まで対応し、JPEG圧縮回路も含んだ「NI-21x0」シリーズを投入する予定になっている。
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