中国人にとっての携帯とは?中国のケータイ事情(1)(1/2 ページ)

» 2005年09月16日 21時18分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

 中国では4億5千万台の携帯と中国版PHSが使われているそうだ。また別の調査では100人に28人の割合で携帯電話が普及しているのだとか(どちらとも中国信息産業部調査)。これでもまだ中国人民の3分の1だが、それでもこの数字は凄まじい。

 中国といえば、平均月収1万円強で、沿岸内陸格差と都市農村の格差が混ざり合い、100メートル歩けば給料が軽く100倍を越える人が出会う国。そんな国で、最低でも1万円はする携帯や、最低でも3000円はするPHSをこれだけの人が買ってしまうというのは驚異的だ。日本人の金銭感覚に直すと携帯電話の価格は30万円であり、チャーハン一杯70円とすると150杯分にあたる。こんな国で携帯電話を持つことがどれだけ驚異的かは推し量れるだろう。それだけ多くの中国人が携帯を必要としている。

中国では人によっては命綱

 中国都市部の若者世代が携帯電話を必要とするわけは、友人とのコミュニケーションのためだ。この点で携帯電話に対するニーズは日本人と似ている。一人っ子政策のおかげで学生は親から溺愛され、ケータイという高価なものも買ってもらえる。さすがに月収2千円の農村の家庭ではケータイは厳しいが……(3月14日の記事参照)

 ビジネスマンなら仕事のために携帯を所有する。ちなみに、そういった人らはある程度財政に余裕があるためPCを持ってインターネットに接続するネチズンでもある。例えば中国の大手検索サイト百度の、ジャンル別検索キーワードランキングにおけるデジタル製品部門ランキングでは、“手机”(携帯電話:ソウォーチー)がMP3プレーヤーやデジカメ、PCを抜いてダントツの1位で居座りつづけている。ネチズンにとって、携帯が最も興味のあるデジタルグッズであることは間違いない。

 ネットユーザーは1億人に達したというが、それを引いてもまだ3億5千万人の携帯利用者がいる。もちろん1人で複数の番号やキャリアと契約している分も含まれるだろうが、残りの大半は、PCやネットに興味のない中年以上の人々(ネット統計を見れば分かるが、中国では40歳を境にネット利用者が激減する)か、「携帯が家宝」と言い切れる低所得層の人々だ。

 では低所得層の人がなぜ携帯を所持しなくてはならないのか。それは、中国の至るところで見かける壁に落書きされた謎の数字に答えがある。内陸部だろうと沿岸部だろうと農村で働くよりは都会で働くほうがよほど金になる。そこで、農村出身の学歴がある人も、ない人も、あげくには戸籍すらない人も都市へ出稼ぎにやってくる。彼らは日本のように職安で探すなんてことはしない。多くの出稼ぎ労働者の最大の武器である体力を武器に、近所の人から依頼されると、自転車で超巨大な荷物を運んだり、建築現場で働いたり、“自分流”リフォームをしたり、偽造証明書(IDカード、学生証、在職証、戸籍などなんでも)の窓口となるなど、明日生きるための何でも屋となる。

 仕事をもらうためには近所の人々に自分をアピールしなくてはならない。そこで塀や家の壁に、大きく自分の携帯電話番号を書くのである。これが例の数字の羅列の落書きの正体だ。つまり唯一の連絡方法である携帯なくして仕事なし。明日の自分のため、生きるためになけなしの所持金で携帯を買い、仕事を得るのだ。こうして農村出身の出稼ぎ労働者のほとんどといっていいほどの人が携帯を所持するようになった。

壁の携帯電話番号の落書き
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