韓国の金融・バンキング事情2──LG Telecomに聞く、モバイルバンキングの現状韓国携帯事情(1/2 ページ)

» 2005年09月29日 20時55分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 前回は韓国の決済事情の詳細を伝えたが、今回はモバイルバンキングについて、その現状を伝える。モバイルバンキングの利用法などについては一度、詳細を伝えたことはあるが(1月12日の記事参照)、今回は特に実際のサービスの詳細や利用状況にスポットを当て、韓国のモバイルバンキングの現状を浮き彫りにする。これについて韓国3キャリアの中でも最初にモバイルバンキングサービスを開始したLG Telecom(以下、LGT)にメールインタビューを行った。

ICチップバンキングの先駆者、LGTの「Bank ON」

 LGTは2003年9月1日、国内で初めて金融チップ(非接触ICチップ)によるモバイルバンキングサービス「Bank ON」を始めたキャリアだ。現在は国内の有力銀行17行と提携しサービスを提供している。

 LGTによると、2005年6月末のBank ON会員は約230万人。韓国政府の情報通信部による、8月末現在のLGTの会員数が624万785人なので、3分の1以上のLGTユーザがモバイルバンキングの会員となっている。また同社によると、サービス開始から1年程度で加入者が100万人を突破したということなので、1年ごとに100万人程度ずつ会員が増加していることとなる。現在販売されているLGT用端末の約80%はBank ON対応となっている。

 以前、ICチップを使わないWAP方式によるモバイルバンキングサービスを提供していた時代は、利用料金がかさむことなどから、なんと0.1%未満という低利用率に終わっていたという。ICチップを利用するようになってからは、通信料が既存の10〜15%も減少しているほか、月800ウォン(約80円)で使い放題のプランも用意され、経済性や利便性が大きく増している。

Bank ONの特徴的なサービス

 「Bank ON」では金融チップを利用することで、保安性や簡便性が高められているのが最大の特徴だ。残高照会や振込みだけでなく、公共料金などの振込みや交通カード機能、証券取引機能まで提供している。Bank ONサービス開始初期は残高照会や振込みを始めとした基本的な機能しかなく、また対応銀行も国民銀行のみだったのに対し、現在は17行まで増えるなど、サービス開始から約2年間で大幅な増強が図られた。

 特に交通カード機能に関しては、釜山銀行の場合、電子マネーとしても使えるプリペイド方式の交通カードとしても利用できるほか、ソウルに本店がある数カ所の銀行ではクレジットカードのように1カ月の利用料金を後払いする方式の交通カード計2種類が用意されている。今後はプリペイドと後払いを同時に搭載できるようにしていく予定だという。

 またLGTと提携している銀行の1つである外換銀行では外貨送金もできるほか、国民銀行では宝くじの購入や当選番号を知らせるサービスも持ち合わせるなど、銀行別に特化したサービス提供も行われている。

 Bank ONのもう1つの特徴が保安性だ。金融チップのPIN番号や暗証番号入力のほかに、銀行のバンキング専用網を利用し、かつEnd to End暗号化(データが発信元から暗号化されて送られ、受け取り先で復号される方式)がなされることによって、同社いわく「スーパーコンピュータでもハッキング不可能な」サービスとなっている。さらに最近では指紋認識が可能な携帯電話も販売されている。

 また同サービスではJava VMを利用しているため、新しいサービスが登場しても携帯端末にソフトウェアをダウンロードするだけで済むという簡便性も持っている。Java VMによる同様の方法は、WAP方式に変わる技術として、モバイルバンキング専用のソフトウェアをダウンロードするVM方式として採用されたが、携帯電話のメモリ不足が原因となり結局はこれも不発に終わっている。その当時から比べると、現在は携帯のメモリ容量もかなり増えアプリの性能も向上したことを表している。

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