「P701iD」で生まれた、ユーザー視点の「意識改革」(1/2 ページ)

» 2005年10月31日 15時11分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 「P701iD」(機種別記事一覧参照)は、NTTドコモとパナソニック モバイルコミュニケーションズ、グラフィック・デザイナーの3者によるコラボから生まれた携帯電話。外部デザイナーが参加したことで、メーカーの端末作りはどう変わったのか。パナソニック モバイル 第一モバイルターミナルディビジョンの大北英登プロダクトマネージャーと商品企画グループ商品企画第一チーム 主事の富澤美玲氏に聞いた。

左からパナソニック モバイルコミュニケーションズ 商品企画グループ商品企画第一チーム 主事の富澤美玲氏、同第一モバイルターミナルディビジョンの大北英登プロダクトマネージャー、モバイルコミュニケーションズ開発推進チームの安藤希氏


 ドコモ、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏、パナソニック モバイルコミュニケーションズの3者コラボによる「P701iD」

2つの観点から1つの製品を仕上げる

 これまでパナソニック モバイルの端末は「どちらかというと、プロダクト側から商品を作り上げていくという形で開発してきた」と大北氏。それに対して佐藤卓氏のデザインは、「感性や、純粋なグラフィックという観点からデザインされたものだった」(大北氏)。視点が違うところから1つの製品に仕上げていくところが、これまでの進め方と異なる部分だったと話す。

 グラフィックデザインのプロである佐藤氏と、プロダクトとしての携帯デザインのプロであるインハウスデザイナー(パナソニック モバイル社内のデザイナー)とは、観点の違いから最初は意見がぶつかることもあったという。しかしディスカッションを重ねるうちに“携帯電話はこうあるべき”という論点と、“グラフィック的にはこうあるべき”という論点が融合してきた。「インハウスデザイナーが、佐藤さんの意図しているところをうちなりに解釈して、それを開発側にフィードバックするという役割を果たした。それがデザインも機能も妥協のない端末を生み出した」(大北氏)

意識しなかった細かいところまで計算されたデザイン

 佐藤氏をデザイナーに迎えて、パナソニック モバイルの企画・開発陣が驚いたのは、細部にまでわたるデザインへのこだわりだった。

 「“携帯電話の分割線(携帯電話の上下のケースをつなぎ合わせる線)は、真ん中になくてはならない”“ここの角の丸みはこの角度じゃないといけない”など、線の1本1本にまでこだわりがあった」(大北氏)

 例えばヒンジ部付近にあるパーツの接合部を1つとっても細かい指示があったという。「線と線がクロスするラインのつなぎ目も、ただ単に直線でつなぐのでは微妙にずれが出てしまい、ぱっと見たときにユーザーが違和感を覚える。こだわっていることをユーザーに伝えるには、つなぎ目に必ずアール(曲線)が必要だと。我々は、ここまで細かいところまでは感じていなかった」(大北氏)

 ヒンジ部付近にあるパーツ接合部のラインは、つなぎ目の1つ1つまで違和感のないものに仕上げた

 これまでの端末開発では、どちらかといえば作りやすさ(製造)寄りの発想やデザインがデザイナーの要望に合っていれば、“あとは技術的にこうしたほうがいい”という発想になりがちだったと大北氏は振り返る。「今回のコラボで“お客さんが端末を手にして何を感じるのか”という視点が、より強くなった。どうしてこの線が必要なのか、違和感をなくすには技術的にどうすればいいのか──そんな検討を何回も繰り返した。技術陣もお客様に近い考え方で開発に臨んでいたように思う」(大北氏)

メニューがモノトーンの理由

 P701iDのメインメニューは、モノトーンのデザインを採用した。「見た目に合った(シンプルな)画面で統一感を出す」(富澤氏)のが狙いだ。

 ただ、こうした発想はこれまでなかなかできなかったという。「何万色表示の液晶、解像度がいくら──というスペック競争の中では、どうしても性能をアピールしようとして描画力や色が映えるものを選んでしまう」(同)

 思い切ってモノトーンのメニューにしてみると、「はっきりしたコントラストで、カラーのごちゃごちゃしたものより見やすかった」。これも“携帯の原点”が見えた1つの例だ。

デザインに合わせて新たに部品を作る

 端末を開発する上では、当然のことながらすべてを佐藤氏の要望通りにできるわけではない。感性からスタートしたものを、携帯電話として市場に受け入れられるものとして成立させる作業が必要になる。その過程では、やはり意見が食い違うこともあったと大北氏。ただ、互いに納得がいくまで検討を重ね、それを実現するために技術陣がさまざまなアイデアを提案した。

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