韓国発の技術であるWiBroに関連して、最近さまざまなニュースが発表されるようになった。来年に予定されている商用化を前に、通信会社やメーカの動きは加速している。韓国のWiBroの現状をお伝えしよう。
韓国政府の情報通信部は11月15日、9月に台湾で行われた「IEEE 802.16e会議」にて、WiBroが国際標準に採択されることが確定したと発表した。これによりWiBroはIEEE 802.16eの1規格として認定されたことになる。
情報通信部によると、IEEE 802.16e準拠の「Mobile WiMAX」を推進しているWiMAX Forumでは現在、IEEE 802.16eで定義されているさまざまな機能についてプロファイルを作成中で、完成は12月頃になるという。
11月15日〜18日に、韓国第二の都市である釜山で行われたAPEC(アジア太平洋経済協力)会場では、KTやSamsung電子、SK Telecomなど、韓国を代表するIT関連企業による展示も行われた。
そこで最も注目を浴びていた展示の1つが、Samsung電子のWiBro端末だ。同社が「今回が世界初公開の一般携帯型WiBro端末」とする「H1000」を公開した。
H1000はQWERTYキーボードを採用し、画面を縦にも横にもして見られる凝ったギミックが大きな特徴だ。画面がヒンジごと奥側に倒れ、さらに90度回転させればキーボードの上側に画面が収まり、電子手帳のような状態で使用できる。このほか画面は2.2インチで、カメラは30万画素と200万画素の2つが搭載されている。
さらに同日にはPDA型の「M8000」も公開された。これは10月18日にKTが、Samsung電子や韓国政府の情報通信部とともに、WiBroのテストを行った際に利用された端末だ。
MP3メーカーのReignComは、来年8月にポータブルマルチメディアゲーム端末機をリリースすると予告している。
そのReignComが11月に入り、その端末機をWiBro対応にすると発表した。同社はKTと提携することで、KTのWiBro網を通じてオンラインサービスを提供するとしている。
さらにReignComはこの端末機に対応したポータルサイトも開設する予定だという。ここではゲーム、動画、チャットなどの各サービスが提供される。ReignComによるサイトだけでなく、KTによるポータルサイトとの連動も図っていく予定だ。
ポータルサイトの内容はまだ明らかにされてはいない。しかしReignComといえば世界で人気の携帯音楽プレーヤー「iRiver」のメーカーだけに、音楽機能をウリにすることが予想される。またポータルサイトの「Paran」を運営するKTHや、音楽配信サービス「Dosirak」などを展開する携帯電話キャリアのKTFなどを子会社とするKTと協力することで、当初から強力なコンテンツ展開をすることも可能だろう。
ちなみにKTFの「Dosirak」は、Sony Computer Entertainment Korea(以下、SCEK)のPSPに対して音楽配信をすることが既に決定している。これに関してKTFとSCEKは10月に提携しており、KTFの代理店でPSPを販売することともなっている。
既に韓国で人気と知名度を上げサービス拡大を図っているPSPに、ReignComはどう対抗していくのか。来年8月の販売が楽しみだ。
最初にWiBroを商用化するのはKTだ。同社による商用化は来年上半期の予定となっており、それ以前にも何度かテストを行っている。
またSamsung電子は、WiBro技術をブラジルに輸出すると発表している。同社はブラジル最大のメディアグループである「ABRIL」のケーブルテレビ局「TVA」と契約。システムおよび端末を供給する。これにより来年上半期に試験サービスを、下半期にはサンパウロ地域での商用サービスを実施する予定だ。Samsung電子ではこれまでにも、米国のSprint Nextelなどに対しWiBroの試験用システムなどを輸出している。
国際標準採択を弾みに、韓国ではWiBroをより多くの国へ拡大したいとしている。そのためにも国内での商用サービスはぜひとも成功裏に収めたいところだ。情報通信部では来年3月末から実施する、携帯電話に対する条件付補助金の許可について、スマートフォンだけでなくWiBroなど最新技術を搭載した端末もその範囲に含めている(11月14日の記事参照)。またWiBro搭載のポータブルマルチメディアプレーヤをリリースするReignComなど、新規参入も今後は増えていくことだろう。
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