こうして、携帯初の静止画手ブレ補正は誕生したNECに聞くN902i(前編)(1/2 ページ)

» 2005年11月25日 11時23分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 NEC製FOMA端末「N902i」を見て、目を引くのはやはりカメラ機能だ。「N901iS」が有効100万画素スーパーCCDハニカムを採用していたのと比べ、N902iになって一気に有効200万画素(記録400万画素)にまで画素数を上げてきた。さらに、携帯業界初となる静止画手ブレ補正機能に対応している。

 静止画手ブレ補正を、どうやって実現したのか。またカメラ機能がどう向上しているのか、NECモバイルターミナル事業部商品企画部の高梨博氏に聞いた。

Photo N902iは全体をなめらかな曲線で包んだフォルムを採用した。その分、若干厚くなったきらいはあるが「側面を先端に向けて尖らせることで、コンパクトさも演出している」(高梨氏)

「一言で説明できるアピールポイント」を

 なぜ、カメラ機能を向上させたのか。実は、Nユーザーからもカメラ機能の向上を求める声は上がっていたと高梨氏は話す。「NEC端末の操作性などを評価して『指名買い』してくれるユーザーもいるが、操作性はカタログスペックに現れない部分。カタログを見せて、(手ブレ補正付きと)一言でアピールできる機能を開発することにした」

Photo NECの高梨氏

 高梨氏は、携帯のカメラ撮影は片手で撮るものだと考えた。ただ片手で撮れば、当然ブレやすくなる。そこで「手ブレ補正をやろう」と提案したわけだが、「言ったはいいが最初は方法が分からなかった」と苦笑する。「(デジカメの手ブレ補正で一般的な)ジャイロセンサで手ブレを感知し、アクチュエータでレンズを動かす『光学式手ブレ補正』は、部品のサイズも大きいし重くなる。消費電流の面で考えても、携帯には載せられないね……と話していた。そこで技術陣から『デジタル手ブレ補正というのもある』と教えてもらった」

 デジタル手ブレ補正は、デジタルビデオ用の手ブレ補正技術として多く採用されているもの。画像の動き(=ブレ)を検出して、それを画像処理で補正する技術だ。N902iで採用されているのはこれを静止画に応用したもので、静止画を撮影して特徴点を抽出、重ね合わせることでブレを補正する。この方式なら、部品のサイズも小さく、軽くなる上消費電流も少ない。ただ、1枚の画像を生成するのに実際には4枚撮影しているわけで、その分時間がかかるというデメリットがある。

Photo デジタル手ブレ補正の仕組み(「NECワイワイもばいる」より抜粋)

 「例えばシャッタースピードが1秒だとすると――実際にはこれほど長いことはあり得ないが――最初の0.25秒で1枚撮影し、残りの0.75秒はシャッターを閉じる。これを4回くりかえして、さらに(合成の)処理を行う」。このため“パシャパシャと連続撮影”することを想定して開発設計されるデジカメなどでは、採用例が少ない。

 しかし携帯でなら、これが許されると判断。NECはN902iのために、専用のDSPを用意した。またCPUとして新たにOMAP2を採用したこともあり、「これらの“合わせ技”で、最終的に3〜4秒で処理を終了できるようにしている」という。

 もちろん、開発には試行錯誤もあった。4枚の画像を組み合わせると、ノイズが乗る。できるだけ露光を明るくしたいが、それだとノイズが乗りやすくなるなど、バランス調整に苦労したという。

 ただし、終わってみると「案外上手くいった」と高梨氏は手ごたえを話す。「光学式だと、どうしても(ブレに)追随できない部分が出てくる。デジタル手ブレ補正のほうが、ブレを許容できる」

発色など「映り」そのものも改善

 N902iのカメラの改善ポイントは、手ブレ補正だけではない。発色やシャープネスなど、「そもそもの映り」がよくなっていると高梨氏は胸を張る。

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