作品名 | 大停電の夜に |
監督 | 源孝志晃 |
制作年・製作国 | 2005年日本作品 |
クリスマスイブは、普段はなかなか言えない気持ちを伝えたくなる時。イブの夜に会いたい人へ、思い切って携帯電話をかけた人々が登場する『大停電の夜』。イルミネーションが一番輝く夜に、東京は大停電に見舞われてしまいます。真っ暗になった街で、携帯電話は連絡手段だけでなく、ライトとしても活躍します。
昔の恋人への想いを断ち切れずにいる木戸(豊川悦司)は、今日のクリスマスイブを最後に長年続けてきたジャズバーを閉めようと決めていました。かつてはジャズプレイヤーとして脚光を浴びた木戸も、今では自分の店でレコードを聴くだけで、演奏することもありません。恋を失った時から、音楽への情熱も冷めてしまったのでした。そんな自分に区切りをつけるために、木戸は思い切って恋人・静江(原田知世)と携帯電話で連絡をします。突然の電話にとまどう静江。
「なんで今ごろそんなこと言うの」
渡したいものがあるからクリスマスイブの今夜、店に来てほしいと頼む木戸。
「十年前に言えなかったから」
一方的に告げて、木戸は電話を切りました。
「夜が明けるまで待ってる」
こうして、静江を待ち続ける長い夜が始まったのでした。
お台場のホテルでは、会社員の美寿々(井川遥)がせっぱ詰まった様子で、携帯電話を握り締めていました。
「何度もごめんなさい」
電話の相手は、恋人の佐伯(田ロトモロヲ)でした。佐伯には妻がおり、クリスマスイブには会えないと分かっていたのに、連絡をしてしまったのです。
「どうしても今日会って、話したいことがあるんです」
最初は断った佐伯も、いつもと違う美寿々の態度が心配になり、会いにいくことにします。ディナーを約束していた妻には、仕事で行けなくなったと言い訳をして。しかし、やっと現われた佐伯を前に美寿々は今までの不満が爆発。自分の感情を抑えきれずに責めたててしまいます。佐伯は何も言い返すことができません。やがて、この恋に未来はないと悟った美寿々。佐伯に別れを告げ、ホテルのエレベーターに乗り込みます。
乗り合わせたのは、中国からの研修生のホテルマン・李冬冬(阿部力)。エレベーターの中で泣きじゃくる美寿々に驚きます。ついつい見てしまうと、美寿々に睨まれ、二人きりの密室は気まずい空気。そんな時、エレベーターが急に止まり、真っ暗になってしまいました。東京中が停電し、エレベーターの中に閉じ込められてしまったのです。慌てる李冬冬とは対照的に、落ち着き払う美寿々。鞄から携帯電話を取り出し
「これ持っててくれます?」
と李冬冬に渡します。
「顔にあててくれます?」
携帯の液晶の明かりで、美寿々は涙でくずれた化粧を直し始めたのでした。そんな美寿々の態度を見て
「携帯って、意外と明るいな」
と思わず口走ってしまった李冬冬。素直な言葉になごんだ美寿々。閉じ込められたエレベーターの中で、少しずつ自分の身の上を話し出す2人。こんなふうに、大停電のクリスマスイブの意外な出会いの物語がいくつも綴られていきます。そして、夜が明ける前に、木戸は静江と再会することができたのでしょうか? 部屋の明かりを消して、ろうそくの火を灯したくなる、ロマンティックな作品です。
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