携帯のボディは、当然ながら金型で成型した後に取り外す作業が必要になる。このとき、ぴったり90度だと金型にくっついてしまって取り外しにくくなる。3度ぐらい角度(=抜き勾配)をつけてやれば、取り外しが楽であるため、往々にしてそちらを選択しがちなのだという。このあたりは、技術的な問題というより手間の問題。ただし、手間がかかるということはもちろん、コストがかかるということでもある。
実は開発メーカーである東芝も「(完全な垂直でなく)勾配をつけますか?」と打診してきたのだが、小牟田氏はそこの手間を削って全体の価値を下げることは言語道断だと考えた。その思いを伝えると「東芝側も『ですよねえ』と言う。向こうも、初めから分かっていたようだ」
深澤氏が当初、考えていたneonのイメージとは「一枚の板を2つに割って、重ねた」かたちだった。確かにこれが実現できれば、究極のシンプル折りたたみケータイとなったかもしれない。
だが、開発を進めると「どうしても折りたたみのバッテリー側、底面部が厚くなってしまうことが分かった。しかしこれでは、一枚の板を折り曲げたことにならない」。そこで深澤氏がひねり出したのが、底面のテンキー部だけをせり上がらせて、「背面部」+「底面部」+「中に黒く見えるテンキー部」にするというアイデアだった。
「(底面部からテンキー部を)浮かせてあげて、それを同じ厚さの2枚の板が、サンドイッチのようにはさむようにする。これによって折りたたみの背面と底面の間にすき間ができ、そこに指を入れて開閉もしやすくなる」。neonの独特のスタイルの背景には、こんな試行錯誤があったようだ。
neonの開発にあたっては、ほかにも注意したポイントがあるという。例えば、ツヤのある表面の塗装の処理のでは「業界的にムリ」(小牟田氏)という問題にもチャレンジしたというが……。そのあたりは、近日掲載する「KDDIに聞く『neon』(後編)」で書いていきたい(続く)。
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