カミュなんて知らない「どうしても出演してほしいんです」Mobile&Movie 第197回

» 2006年02月03日 22時52分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名カミュなんて知らない
監督柳町光男
制作年・製作国2005年日本作品


 今回ご紹介する作品は、大学生の映画制作風景を描いた「カミュなんて知らない」。撮影準備のために連絡を取ったり、愛の告白メールを送ったり、学生たちの日常に携帯電話が数多く登場します。

 物語は自主制作映画の助監督・久田喜代子(前田愛)が、携帯電話で必死に説得するシーンから始まります。

 「どうしても出演してほしいんです」

 大学のワークショップで出された課題に合わせて、映画を作ることになった学生たち。映画のタイトルは「タイクツな殺人者」。クランクインまで、あと五日と迫ったところで主役を演じるはずだった学生が出られなくなり、代役として池田(中泉英雄)を口説く久田。実際に起きた老婆刺殺事件がテーマの映画だけに、主役選びは重要です。池田の出演が決まらなければ、撮影自体も始められそうにありません。他のスタッフもクランクイン目指して、衣装や小道具の準備、予算の確保などに追われていました。

 監督の松川(柏原収史)は、映画以外の問題を抱えていました。それは長く付き合っている恋人のユカリ(吉川ひなの)。撮影直前でコンテ作りなど、やらなければいけないことが山積みなのに、ユカリは構わず会いにくるのです。邪魔をするなとそっけない態度をとっても、次の日には何もなかったかのように、差し入れを持って会いに来るユカリ。その愛は松川にはどんどん重荷になるばかり。

 池田の出演が決まったところで、衣装合わせや台本の読み合わせなど、本格的に動き出します。老婆を殺した高校生を演じる池田に対して、松川や久田は演技のアドバイスをしますが、意見が食い違い、現場はヒートアップ。そうした緊迫した場面でもスクリプターの綾は、携帯電話のカメラで皆の表情を撮ったり、自分撮りしたり、一人だけのん気な雰囲気。

 池田は久田に勧められてカミュの『異邦人』を読み、殺人者が“異常”だったのか“正常”だったのか、考えてみようとします。

 「ためしてみたかったから」

 そんな心理に共感を覚える池田。やがて、映画の進行が少しずつ遅れ、取り返すため、さらにハードなスケジュールが組まれ、松川や久田の疲れも溜まっていきます。そんな時に、久田の携帯電話に撮影担当・本杉からの愛の告白メールが届きます。誰にでも同じメールを送っているのだからと相手にしなかった久田でしたが、なんとなく本杉の存在が気になるように。久田には恋人がいたのですが、すぐそばにいる相手に甘えたくなったのです。さらに、池田までが久田に演技のため、と接近してきて映画の現場は恋の嵐。

 そして、ようやくクランクインの日を迎えますが、その前に大きな事件が起こってしまいます。「タイクツな殺人者」は無事に撮影できるのか? 大学生達の恋の行方は?

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