慶大生はケータイとmixiの未来に何を見る? (3/3 ページ)

» 2006年02月24日 23時51分 公開
[吉岡綾乃,ITmedia]
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大学生へのmixiの影響は強い?

 この他にもさまざまなアイデアが披露されていたのだが、全体を通じて印象に残ったのが、mixiが学生たちに実に強い影響を与えていることだ。学生たちが考える「欲しいサービス」はほとんどがmixiに機能拡張することで実現できそうなものだった。

 実際、発表していた学生の多くはmixiを利用している。「mixiユーザーの学生は多いし、特に男子学生は多くがモバイルmixi(注:携帯でアクセスするmixi)を利用している。mixiを利用していない場合はblogで友達とつながっていることが多く、mixiとblogの両方を使う学生も多い」と武山政直助教授は指摘する。

 「mixiの日記で、面白かったことやオススメの情報を書く」「友達の日記を見て、自分もそれを追体験する」「モバイルmixiで暇そうにしている友達を見つけ、近くにいればいっしょに遊ぶ」……これらは、mixiでよく見かける行動様式だ。「人とつながりたい」「寂しいから、今、誰かといっしょにいたい」という欲求を、mixiと携帯は上手に満たしてくれるのである。

 学生たちが挙げているサービスを聞きながら、「類似のサービスはすでにあるな」と思うものも実は多かった。位置情報や時間に合わせて情報を提供するサービスとしては日立製作所が提供する「キメクル」(2005年8月8日の記事参照)があるし、またある生理用品メーカーでは、ユーザーが月経周期を登録しておくと「ダイエットするなら今がオススメ」とか「体調が悪くなりがちな時期なので、こんなことをして気を紛らわせましょう」といった、体調に合わせたアドバイスメールを会員に送るというサービスを行っている。しかし、ここにクチコミ的要素やSNS的サービスを加えた例は、たしかに思い浮かばない。

 またKDDIのコンテンツ・メディア事業本部で、ナビ関連の企画を担当している小林大介氏は、位置情報を使ったサービスの発表を聞いて「うちも同じようなアイデアを考えているし、うちで行っているのと同じような分析をしていて驚いた。ユーザーのクチコミと位置情報を連動する試みは受けるだろうと思っているが、SNS的な要素を入れないと、見知らぬ第三者にユーザーが位置情報をさらすことになってしまう」と話していた。「現状、いくつかのサービスがあり、同じようなユーザーを対象にちょっとずつ違うサービスを提供しているが、たしかに連携はできていない状態。同じ建物の違う階で同じことをしようとしているような感じ」

 「友達やセンスのいい知人」の提供する情報ならば、喜んで受け取りたいし、自分もそこに行ってみる、買ってみるといった行動にも移りやすい」――そんな慶大生のメンタリティを端々に感じる発表内容だった。最後にKDDIコンテンツ・メディア事業本部長の高橋誠氏は、「我々は『どんなことをしたら便利になるか』ということを考えて、これまでサービスを考えていた。しかし求められているのは便利さではなくて『人とコミュニケーションしたい』という欲求なのかもしれない。レコード会社から押しつけられるCDではなくて、人に勧められたCDを買いたい、ということ。去年の産学共同研究で教えられ、LISMO(1月19日の記事参照)はそこにも着想を得ている」と話した。

 mixiのようなSNSをポータルにし、位置情報を利用したコンテンツと、クチコミの仕組みをうまく作りこむ――「携帯向けのプッシュ型配信サービス」の成功例は、実はそんな形で実現するのかもしれない。

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