Qualcomm CEO、「先進的な日本市場には常に注目している」MediaFLO Day(1/3 ページ)

» 2006年03月06日 08時00分 公開
[園部修,ITmedia]
Photo 米QualcommのCEO、ポール・ジェイコブス氏

 米Qualcommが自ら放送用の周波数を獲得し、専門のサービス提供会社「MediaFLO USA」を設立するなど、早期の市場投入を目指して開発してきた「MediaFLO」。米Verizon Wirelessという通信事業者をパートナーに迎え(2005年12月2日の記事参照)、2006年中には離陸する見込みだ。

 すでにオペレーションセンターなども稼働しており、試験も順調に進んでいる。順風満帆に見える同社のCEO、ポール・ジェイコブス氏に、MediaFLOに取り組む理由や将来へ向けての戦略を聞いた。

MediaFLOはスケーラブルなマルチメディアコンテンツ配信

 そもそも、携帯電話用チップセットを開発する米Qualcommが、なぜ放送事業を自ら手がけようとしたのか。ジェイコブス氏は、スケーラブルなマルチメディアコンテンツの配信を行いたい、という考えが発端だったと話す。携帯電話向けに放送のようなサービスを行うビジネスを考えていたのだという。「当初はオーディオのブロードキャスティングを考えていたが、端末の画面の表示能力やチップセットの処理能力が高いことから、いろいろ検討しているうちにビデオの配信も可能ではないかと思うようになった」

 ここで同氏は、韓国がCDMA 1x EV-DOのサービスを開始したとき、テレビの映像を3Gネットワーク経由で配信する定額のサービスを提供したことを紹介した。このサービスは非常に好評だったが、あまりに多くのユーザーが利用するようになったため、ネットワークへの負荷が高くなりすぎ、後にパケット単位で課金するように変更した。すると、あっという間に利用者が激減したという。

 高品質なビデオを再生するには、音声の数百倍のデータを転送する必要がある。しかし、「データ量に応じて課金をすると、ユーザーは使ってくれない」とジェイコブス氏。このことから「携帯電話のネットワークとは全く異なる形のアプローチをとらないことには、多くの人に情報を届けることはできないと考えた。そこでMediaFLOのように、放送的に情報を配信する方式を思いついた」。

 ただ、MediaFLOを単にテレビ放送のような一方通行メディアにしておくつもりはない。サービス立ち上げ時には、MediaFLOのユーザーインタフェース部分のみがBREWアプリで提供されるが、MediaFLOとBREWは将来より密接に結びつくと話す。MediaFLOの不特定多数に対する情報配信能力に、BREWと3Gネットワークでインタラクティブ性を持たせるわけだ。「例えばMediaFLOで受信した株価情報を見ながら、株式取引用のBREWアプリを呼び出して株を売買するといったことが可能になる。いずれはMediaFLOとBREWアプリの間を、必要に応じていったり来たりできるようにする」

 ではBREWのない環境ではMediaFLOが視聴できないのかというと、それも違う。「MediaFLOはBREWなしでももちろん動作する」(ジェイコブス氏)

携帯電話以外への展開も需要があれば検討する

 テレビ放送のように映像や音声を配信するMediaFLOは、携帯端末以外の受信機も容易に作れそうだ。前述のように、BREWには依存しないので、例えば車のリアシートエンタテイメントのようなものに活用することは考えていないのだろうか。

 解像度がQVGAでいいのであれば、MediaFLO対応端末にテレビ出力端子を設け、それを車載のディスプレイと接続するといった対応も可能だろうと話す。著作権保護機能(DRM)などをしっかりと実装しておけば、MediaFLO端末をiPodのように車に接続し、放送を車で楽しむこともできるという。もちろん車自体がMediaFLOを受信できるようにするという手もある。

 ただ、MediaFLOは携帯電話の小さなディスプレイで視聴することを想定して開発したので、車載の大きなディスプレイなどで視聴する場合、解像度が足りない可能性があるとジェイコブス氏。「より高解像度のサービスを追加するため、VGAでの放送を行うとしたら、具体的な数値は分からないが少なくとも5倍以上の情報量が必要になる。チャンネル数など、サービス内容そのものを変えたり、あるいは周波数を追加購入したりする必要が出てくるかもしれないので、現状は考えていない。しかし、需要があることがわかれば、柔軟に対応していきたい」

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