携帯料金を苦に少年が自殺。キャリアが取った対策とは?韓国携帯事情

» 2006年03月07日 00時48分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 未成年に高額の携帯電話料金の請求が突然届けられてしまったら、本人や家族、そしてキャリアはどう対応したらいいのだろうか。そんなことを考えさせられる事件が今年1月、韓国で実際に起こってしまった。支払いは当然すべきだが、相手は経済力のない学生。両親に高額な通信料を請求するほかなかったキャリアも、携帯電話料金について再考を迫られている。

高額な料金請求を苦に、中学生が自殺

 2月中旬に入り、高校入学を前にした少年が自殺したというニュースが伝えられた。そもそもの原因は携帯電話インターネット。これに夢中になったあまり、合計370万ウォン(約44万1900円)以上の料金請求が来てしまったことを苦にしたものだった。

 自殺の数週間前、学生に高額な携帯電話料金が請求されたというニュースが伝えられ、瞬く間に事件は全国区となった。携帯電話でのインターネットに夢中になりすぎた少年の元に、1月、2月合わせて370万ウォン以上もの請求が届いていたという内容だった。通信会社からは支払いを催促する電話が来ていたという。

 経済力のない少年に電話で料金催促を行ったキャリアに対し、少年の父親は「子どもに直接電話で伝えたから子どもの負担感が増した。まずは保護者に伝えるべきだった」と催促の仕方が不適当だったと訴え、ソウル市の中心街で1人デモを行った。

 通信料に対する意識が低く、かといって経済力もない未成年によるインターネットの使いすぎは、これまでにも話題にならなかったわけではない。しかし今回の場合は特にその問題が極端な形で現れた事件となった。

データ通信料を抑える新料金制

 こうした状況に対し、キャリアでは早速データ通信料金を大幅割引する料金制度を用意した。最初に動いたのはKTFだ。KTFは月5000ウォン(約590円)を支払えば、1カ月2万ウォン(約2300円)相当のデータ通信料が無料になる上、それを超えた場合は超過額の70%を割引するという「汎国民データ料金制」を新設した。

 これに続きSK Telecom(以下、SKT)も月1万ウォン(約1100円)を支払えば、1カ月5万ウォン(約5900円)相当のデータ通信料が無料になり、それを超えると超過額の60%を割引する「データ安心定額制」を準備中だ。

 例えばKTFユーザーがこれに加入し、9万ウォン(約1万1900円)分のデータ通信を行った場合、まずここから無料分の2万ウォンが引かれる。残り7万ウォンからさらに70%が割引され2万1000ウォンとなるが、ここに5000ウォンの基本料が加算されるため最終的には2万6000ウォン(約3100円)相当のデータ通信料金を支払うことになる。

 この料金制の良い点は、どんなにたくさんインターネットを利用してもKTFの場合は2万6000ウォン、SKTの場合は3万ウォン(約3500円)が上限金額となることだ。そのため、データ通信を毎月9万ウォン以上利用しているユーザーにとっては大変お得な料金制となる。

 ただし、これまでも上記のようなデータ料金割引および使い放題にする料金制度が全くなかったわけではない。にも関わらず自殺事件が起きてしまった今回のケースを見ると、料金制度の用意とともに、これへの加入促進や料金請求方法の改善などの努力がむしろ必要だともいえる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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