ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ初のFOMA端末「SO902i」は、そのデザインの秀逸さもさることながら、徹底して使いやすさを重視した独自のユーザーインタフェース(UI)を搭載している点も魅力だ。端末はシャープと協業して開発するという発表があった(2004年11月29日の記事参照)ため、ソニエリならではのUIが変わってしまうのではないかと危惧していた読者もいるかもしれないが、実機を見ればその不安はすぐに消し飛ぶ。
残念ながら、一度3月10日と発表された発売は延期になってしまったが、先に掲載したデザイン編に続き、SO902iのもう1つのこだわり、UI編をお届けする。
Symbian OSを使って新たにFOMA端末を作るにあたり、基本となるプラットフォームは既にあった。その上でUIを実現するための部品もドコモから提供されていた。それらを使って、できるだけのことをすればいいと考えることもできたはずだが、開発陣はその選択肢は採らなかった。SO902iのソフトウェア開発に携わったソニー・エリクソンの近藤和弘氏は「UIは端末の顔であり命なので、妥協したくなかった。パワーをかけて開発するべきだと考えた」と話す。
開発に当たって、近藤氏らはドコモに対し「ソニー・エリクソンとして実現したいUIがある。既存のものを流用するのではなく、新規開発が必要になるが、ぜひやりたい」と申し出た。同社初のFOMA端末の開発ということで、ただでさえ圧倒的な作業量があり大変な中、あえてそこまでする必要があるのか、という意見もあったというが、ドコモもそれを快諾した。
近藤氏らの最低限の目標は、過去の端末のUIを再現することにあった。しかし、それをそっくりそのまま移植するのでは芸がない。そこで、ソニエリ端末ならではの雰囲気を損なわないよう配慮しつつ、さらに高級感を付加した。細かな部分では、選択された項目をハイライト表示するカーソルの角を丸くしたり、自然なグラデーションを付けたりしている。
UIは、劇的に変えてしまうと、継承しようと努力したけどできなかったのではないかと誤解されてしまうおそれがあるという。だからこそ、見た目の印象は大きく変えていないが、細かな部分は従来よりも使い勝手を向上させた。
「PDCからワンランクステップアップしたんだと、ほのかに感じられるUIにした」と近藤氏は思い入れたっぷりに話した。「例えていうなら、夏休みが明けて久々にあった女の子が、化粧がうまくなってちょっと大人びたような感じ」
SO902iでは、Symbian OSを採用したことで、マルチタスク機能も実装した。このマルチタスクをどうやって分かりやすくするかは、メニューのインタフェースを構成する上で非常に苦心した点だ。実際、他社の端末ではタスク切り替え専用のボタンを用意したり、その時々で機能が変わるボタンを使ってソフトを切り替えたりする必要がある。
「ユーザーにとっては、新しい機能を立ち上げるのも、既に立ち上がっている機能と切り替えるのも、別なことがしたいという点では同じこと」と近藤氏。何も考えずに「ほかの機能を使いたいと思ったらこのキーを押せばいい」というキーを用意したかったという。
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