携帯で「パブリック・ジャーナリズム」を目指す、ある試み(1/2 ページ)

» 2006年04月04日 21時21分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 “パブリック・ジャーナリズム”という言葉がある。大手メディアの専門記者ではない、一般の市民が報道に携わることを指す言葉だが、ブログ文化の急速な普及や韓国の市民参加型メディア「Ohmynews」の日本進出などもあり、ここにきて注目を集めている。最近では、携帯でパブリック・ジャーナリズムに挑戦するというユニークな試みもある。

 ビジュアルワークスは3月9日、EZweb公式メニューとして「News People」の提供を開始した。時事通信が提供するニュースや、外務省が配信する海外の災害情報などを扱うサイトだが、ウリは「ライター登録した素人がニュースを配信できる」こと。これによって「ケータイユーザー9000万人の『総記者化』を目指す」(ビジュアルワークス)という。

 同社の狙いは何なのか、また“携帯でパブリック・ジャーナリズム”は根付くのか。同社メディアビジネスグループのコンテンツビジネスグループ、牧圭介取締役に聞いた。

最初のアイデアは「携帯のニュース・コミュニティ」

 同社はもともと、個人Webサイトを無料作成できるコミュニティサービス「フォレストページ」を提供する企業。10代の女子高生などがメインの顧客層だったが、より上の年齢層をターゲットにしたサービスを提供しようと考えたという。そこで着目したのが、ニュースだった。「最近ではニュースも、ニッチなものまで含めると量が多くなった。Ohmynewsのことはあまり知らなかったのだが、これを扱おうと思った」(牧氏)

 事件現場に行って携帯で写真を撮り、簡単な文章を書いて投稿すれば“リアルタイムなニュース”になる。PCだとどうしても家に帰って机に座って……というタイムラグが発生するが、携帯なら“場の空気感”まで伝えられるのではないか。そんな考えだという。

 さらに、「ビジュアルワークスにはコミュニティ運営のノウハウがある」(同)。携帯を利用したコミュニティになるよう、記事に批評やコメントを付けられるようにした。記事を書くにはライター登録が必要だが、記事の閲覧や批評を行うのに登録は必要ない。また、広告モデルを採用することで、サービス利用料も無料としている。

 実際に始めると、ユーザーは身の回りのちょっとしたことを写真で撮って投稿するケースが多かったようだ。

 広報企画室室長の齋藤英子氏は、最近では「どこそこで桜が咲いた」といって写真を撮り、ニュースにするケースがあったと紹介する。あるいは「人気製品の発売日にこんなに人が並んでいた」「このラーメン屋にはこんなに行列が並んでいる」といって写真を撮り、簡単な文章とともにニュース投稿するケースも目に付くという。

ニュースの「フィルタリング」はどうするか

 実は、こうしたニュースは投稿すれば即座に掲載されるわけではない。ビジュアルワークス側が数人の担当者によるチェック体制を敷いており、基本的にここで確認作業を経てから掲載する。わいせつな文章や、反社会的な書き込みは人的なチェックと、キーワードフィルタリングシステムなどを利用して除外されることになる。

 この体制は、真にリアルタイムなニュースを提供するという観点では問題もある。ビジュアルワークスでは数人の担当者をおいて投稿ニュースを随時チェックしているが、24時間体制でチェック→掲載の手続きをとれるわけではない。現状では1日に数回、決まった時間にまとめて記事をアップしている状況だという。これだと、深夜に投稿したニュースなどは長い場合で数時間、日の目を見ないことになる。

 もっともこの手続きをなくすわけにはいかない、と牧氏。理由はNews Peopleが“携帯公式サイト”だからだ。公式サイトには、掲載する内容についてキャリアから厳しい注文を付けられている。単純にサイトの品位を保つという観点だけでなく、公式サイトとして存続するためにも、それなりの管理は必要なのだとした。

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