ドコモが驚いたLG電子の「スピード感」――SIMPURE L開発物語(1/2 ページ)

» 2006年04月14日 02時49分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 4月14日、全国一斉に「SIMPURE L」がリリースされた。韓LG電子が初めて開発したFOMA端末であり、また価格を抑えたSIMPUREシリーズの第1号という記念碑的な端末だが、完成までには日韓それぞれのスタッフの苦労があったようだ。

Photo 左から、ドコモのプロダクト部グローバル技術企画担当 渋谷大介氏、LG電子の情報通信事業本部 安長石常務、LG電子東京デザイン分所の分所長 崔晋海氏

 開発に携わったNTTドコモとLG電子の社員に、互いの印象も交えて開発までの道のりを話してもらった。

ドコモが驚いたLGのスピード感

 LG電子常務の安長石氏は、SIMPURE Lの開発が決まったのは2004年のことだと振り返る。LG電子は既に家電分野で日本市場への参入を果たしていたが、ブランド的にはまだまだ弱かった。そこで携帯分野でも参入して、W-CDMAのマーケットで戦ってみたい――という思いがあったという。

 ドコモと意見交換をした後、2カ月がたち2005年の初めになって、LG電子の研究所所長とNTTドコモプロダクト部の永田清人氏の間で「LG電子製のドコモ端末を出そう」という合意がなされた。そこから1年がたち、SIMPURE Lというかたちで製品が世に出ることになったのだという。

Photo SIMPURE Lは3色で展開される。「黒は、全くの黒ではなく茶色っぽい色がまじった黒で、ビジネスマンにも持ってもらえるようにした。赤も真っ赤ではなく、オレンジっぽい色に細かいストライプが入ったデザイン。ちなみにピンクは『ドコモピンク』と呼んでいる」
Photo Casual Redの表面のストライプ柄。ドコモから「日本市場ではこうしたカラーリングがいい」といったアドバイスを受けて、トータルのデザインを作り上げたという

 SIMPURE Lは、開発プラットフォーム自体はグローバルスタンダードのLCDモジュールやソフトウェアを利用している。しかし、端末デザインなどは“ベースになるモデル”が特にあるわけではなく、ゼロから作り上げたものだ。

 ドコモのプロダクト部、渋谷大介氏はその開発スピードに驚かされたと話す。「『かたちもない』状態から、1年ちょっとでここまで作り上げた。問題が見つかってもリカバリーが早く、国内のほかのメーカーと比較してもすぐに直してくれる。だからこの時期に出せた」

 安氏は「LG電子では『朝言われたことは、その日のうちに答えを出せ』と言われている」と笑う。

 「私のレベルで決断できることはすぐにやるし、私の権限を越えることなら社長にいえばすぐ答えが出る。(何か答えを出さなければならないことが起きると)徹夜して、次の日の朝には提出する……ということもある」

韓国がとまどったドコモの「要求水準の高さ」

 逆に、LG電子はドコモにどんな印象を持ったか。安氏が言及したのは「品質に対して要求する水準の高さ」だ。

 LG電子東京デザイン分所の分所長 崔晋海氏は、ドコモの厳しさはスペック以外の面にあったと話す。「例えば端末の表面処理の部分。水圧転写の技術で塗装を行っているが、これが『上から下まで均一でないといけない』といったようなポイントだ。ほかにも折りたたみを開け閉めするときのヒンジの質感や、パーツの合わせ部分の細かさなど、高い完成度を求められる。デザイナーとして勉強になった」

Photo パーツの境目のところが、きちんと均一にまっすぐになっているかどうか。そんなところもドコモはきっちりチェックしてくる
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