4G時代を見据えてQoSを高める──KDDIワイヤレス・テクノロジー・パーク2006

» 2006年04月27日 21時12分 公開
[江戸川,ITmedia]

 2006年4月27日、パシフィコ横浜で無線通信技術の展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2006」が開幕した。同展示会は、無線機器関連の研究開発部門に向けたもので、標準化推進技術の市場動向を確認できる。関係企業にとっては、研究・開発、製造のビジネスパートナーを見つけられる場所でもある。2日間の会期中はセミナーも数多く開催され、大学や企業の研究内容、国際情勢などに触れることが可能だ。

 KDDIは、KDDI研究所と共同でブースを構えている。ブースは、SDMA(Space Division Multiple Access)を使った到来方向推定技術、EV-DOとモバイルWiMAXのシームレスハンドオーバー(2月16日の記事参照)、それにモバイルWiMAXにおける無線スケジューラの研究の3つのテーマに分かれている。

Photo 対象となる無線通信機器がどの方向にあるのかを計測する、4GHz帯到来方向推定システム

 中でも、EV-DOとモバイルWiMAXのシームレスハンドオーバーのデモ展示は、なかなか興味深い(2月17日の記事参照)。同一エリア内に2つの異なる無線通信方式がある場合、これまでのシームレスハンドオーバーは、「いかに途切れがないように切り替えるか」に主眼が置かれてきた。しかし、KDDI研究所では、切り替える側のネットワークの特性に合わせた技術があるのではないかと考え、研究を続けている。

 具体的には、EV-DOでテレビ電話を使っている状態でモバイルWiMAXに切り替えると、「途切れないこと」に加えて、画像が「なめらか」に動き出す。通信速度は200kbpsから1Mbpsになり、映像は25fpsというスムーズな動きを再現する。

 モバイルWiMAXで要求されるQoS(Quality of Service)を満たすための、無線スケジュールアルゴリズムの研究も面白い。無線スケジューラとは、基地局が受け付ける各種パケットを、あらかじめ決められた優先順位に従って送り出すというもの。VoIPのような途切れが許されないものを優先し、FTPのようなものを後回しにするのである。

 無線スケジューラの核となるのが、一定の帯域の中にうまくパケットを詰め込むためのルール作りの仕組みとなる、パケット選定アルゴリズムだ。従来の無線スケジューラに対して、KDDI研究所の開発したQoS対応無線スケジューラでは、この「詰め込み具合」が劇的に改善され、一般のトラフィックにも好影響を及ぼしているようだ。

 ちなみに、こうした技術はモバイルWiMAXの品質向上に寄与するものの、キャリアとしてのKDDIの戦略はまた別の話になる。そのため、具体的に同社のサービスとして将来、モバイルWiMAXを提供するかどうかは未定だという。仮定の話だが、シームレスハンドオーバー対応機と非対応機が別々に登場する可能性もある。これは受信回路の二重化に伴うコストアップを利用者が受け入れられるかにもかかるという。従来製品とはターゲットを変え、「音質がとてもよいプレミアム携帯」としてアピールすると面白いだろう。

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