「番号ポータビリティに特効薬はない」──株主総会でドコモ中村社長(1/2 ページ)

» 2006年06月20日 19時20分 公開
[園部修,ITmedia]
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 NTTドコモは6月20日、都内で第15回定時株主総会を開催した。43万2992人の株主のうち、11万1950人は事前に書面もしくはインターネット経由で議決権を行使。会場には正午までに2395人が来場した。ちなみにインターネット経由で議決権を行使したのは5755人(前日までに議決権を行使した人の5.1%)で、そのうちiモードを利用して議決権を行使したのは1126人(同1.0%)だった。

 同社の株価はここ数年低迷していることもあり、質疑応答では株主からは経営姿勢を問う声や増配を求める声、株主優待の創設を提案する声などが上がった。また、秋に控えた番号ポータビリティ(MNP)制度をふまえ、今後の施策やドコモの戦略を質問する株主も多かった。

番号ポータビリティを見据えた施策

Photo NTTドコモ社長の中村維夫氏

 サービスや端末などに関連する質問の中で興味深かったのは、この秋に始まる番号ポータビリティについてのドコモの見通しだ。NTTドコモ副社長ネットワーク本部長の石川國雄氏は「現在ドコモから他事業者へ転出するユーザーや、他事業者からドコモに転入してくるユーザーは、年間で約200万人から300万人いる。MNPが始まることで、これが一時的に2割から3割拡大すると見ている」という。

 ただ、ドコモではこれはあくまでも一時的なものであると考えているようだ。事業者を変更すると、長期利用割引が引き継げず、料金が高くなってしまうことや、メールアドレスを継続使用できないことを理由に、中期的には収束するだろうと話す。

 またソフトバンクがグループ一体となって攻勢をかけてくることや、新規事業者の参入もふまえて、使いやすい料金体系、高いネットワーク品質、サービスやアフターサービスの充実など、総合力をさらに向上させるとした。「総合力の向上こそが契約を維持し顧客獲得していく最大の方策。平成19年3月の純増シェアは前年同様の水準を確保する計画だ」(石川氏)という。

 株主の中からは、経営陣の見方は楽観的すぎないかとする意見も上がった。「割引が引き継げないとか、メールアドレスが変わるとか、ネガティブなことで既存のユーザーを引き留めようとしているが、新たな契約者を取り込むようなポジティブな施策はないのか」。実際、アンケートなどの結果ではauの人気が高い(6月8日の記事参照)

 これに対し中村維夫社長は「MNPに特効薬はない。10月の一瞬で終わるものではなく、今後もずっと続いていくものだ。顧客の視点に立って、お客様がドコモを選んでくださるような施策をいろいろ考えている」と答えた。ドコモとしては、他社に負けないリーズナブルな料金体系を実現するほか、細分化しているユーザーの好みにきめ細かく対応できる魅力的な端末の提供、3Gネットワークの拡充、そして魅力あるサービスの提供を行っていくことを約束した。

 「MNPは顧客の多いキャリアほど不利といわれる。母体が大きければ、同じ解約率でも解約する人数自体は多くなる。auやボーダフォン(ソフトバンク)とは差別化をしながら新しいサービスなども導入していく」(中村氏)

W-CDMAネットワークを広げるための海外展開

 ドコモの海外展開についての質問を受け、中村社長はかつて米欧のキャリアなどに積極的に投資をした時期があったが、結果的に巨額の損失を生んだことに触れ、「今のドコモの海外展開は端末調達コストの削減が大きな目的」だと話した。

 「3G携帯電話は方式が共通化されており、日本以外の国や地域でも利用できるものが増えている。日本国内だけでなく、ほかの国でも同じ端末が利用できるようになれば、販売できるボリュームが大きくなり、調達コストを安く抑えることができる」(中村氏)

 そこでドコモではW-CDMAとGSM、それにiモードに対応した端末を調達してくれるキャリアのアライアンスを広げるべく活動を行っているという。欧州ではすでに英、仏、ロシアなどでiモードのアライアンスができているほか、アジアでもシンガポール(2003年4月22日の記事参照))やフィリピン(1月31日の記事参照)などでW-CDMAネットワークを構築しようとしているキャリアと協力していることを紹介した。中村氏は「近年展開しているアライアンスではほとんど出資をしておらず、していたとしてもあまり多額ではない。技術的な提携という側面が強い」と話す。今後提携するキャリアに出資するか技術提携するかの判断は、ケースバイケースで下していくという。

 ただし韓KTFへの出資(2005年12月15日の記事参照)とグアム・サイパンのキャリアの買収(3月20日の記事参照)だけは少し事情が異なり、こちらはドコモのユーザーが多く渡航する地域でW-CDMAのネットワークを確保するためだと説明。そのままではドコモの携帯が使えないエリアになってしまう危険性があったため、出資することにしたという。

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