最初は“女性向け”だった──携帯連携ウォッチ「i:VIRT」が生まれるまで携帯+腕時計の未来を探る(1)(1/2 ページ)

» 2006年06月30日 21時14分 公開
[江戸川,ITmedia]

 シチズン時計が7月7日から市場に投入するのが、Bluetoothを搭載した腕時計「i:VIRT」(アイ:ヴァート)(6月9日の記事参照)。携帯電話の着信を、光と振動で知らせるという“世界初”の携帯連動型ウォッチだ。その先進性はもちろんのこと、5000台の限定販売ということもあって、発売前から大きな注目を集めている。

 i:VIRTを市場に投入するシチズン時計の狙いは、どこにあるのか──。開発者に話を聞いた。

「i:VIRT」は女性向けに企画された腕時計だった

 「i:VIRTは、女性向けに企画された腕時計だった」──。いきなりこんな、仰天発言を繰り出したのが、時計開発本部NW事業推進部長の木原啓之氏。そのデザインといい、機能といい、購買層のほとんどがIT系新製品が好きな男性ビジネスマンであろうi:VIRTの出発点は、意外なところだったわけだ。発想の原点にあったのは、女性が電車の中で携帯電話を持つ姿だったという。

 「携帯電話を持ち歩くのに、男性ならズボンの尻ポケットやジャケットなど、しまう場所に困りませんが、女性の場合はそうもいきません。しかしバッグに入れてしまうと着信がすぐに分からないから、結局、手に持ったままなんです。これをどうにか解決してあげられないかと考えたのが、腕時計で着信を知るという方法です」

 商品名i:VIRTの語源になったのは「徳」や「善」を意味する英語virtuesで、困った人を助ける天使といわれる「力天使(りきてんし)Virtues」にも由来する。しかし完成した製品は、とても“女性向け”には見えない。ターゲットを変更せざるを得なかった理由を木原氏はこう説明する。

 「まず小型化、薄型化に対する限界があり、それらをクリアした上で初めて女性向けのデザインが可能になります。i:VIRTは、通常の腕時計と違って携帯電話とのやり取りに(Bluetoothの)電波を使うため、電池の大きさがネックになりました。容積として電池は全体の3分の1以上を占めています」

 女性が使うには無理があるかというと、そういうわけではないと木原氏。腕につける以外の方法も提案しているという。「バッグの取っ手の部分につけるという手もあります。肩にバッグをかけると、ちょうどよい高さでi:VIRTを見ることができます」

Photo パンフレットで紹介している1シーン。主役の女性モデル以外はシチズン時計の開発部員が演じているらしい
Photo 「時計の代わりに携帯電話が使われる時代に、携帯電話と時計の”連携”を商品化した」という木原部長

なぜ、限定発売なのか

 高級感を持たせたシルバーとブラックの2色をそれぞれ2500個、合計5000個という限定発売は、需要予測に沿ったものなのだろうか。

 「普通の時計は、1つのモデルで2年から3年くらいをライフサイクルと見ています。これはデザインの変更があったとしても、駆動部などの中身そのものは変わらないということです。しかしi:VIRTのような商品では、そうはいきません。それならば少数を早く売り切って、次の商品を作ったほうがいいということになりました」

 Web限定販売のように窓口を1本化しているのではなく、全国での店頭販売をすることから、物流に関しても苦労があるという。「商品の入荷まで何カ月も待たせることはないはず」(木原氏)とはいうものの、店によっては早期の完売も予想される。確実に入手したければ予約しておくといいだろう。

Photo パッケージの中身。専用箱の中には本体のほかに説明書、ACアダプタ、充電台、商品タグ、オリジナルストラップが付属する

i:VIRTでできること、できないこと

 i:VIRTでは何ができて、何ができないのか、また自らの利用目的に合った商品なのか──。予約の前には十分な検証が必要だ。

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