セイコーインスツルが目指す、「BT Watch」の可能性携帯+腕時計の未来を探る(2)(1/2 ページ)

» 2006年07月05日 21時35分 公開
[江戸川,ITmedia]

 シチズン時計の「i:VIRT(アイ:ヴァート)」に注目が集まっているが実は、2006年3月に同様のコンセプトを持つ実験機を開発したメーカーがある。腕時計型PC「Ruputer(ラピュータ)」、腕時計型PHS「WRISTOMO(リストモ)」と、常に業界に一石を投じる腕時計型端末を手がけてきた、セイコーインスツル(SII)だ。同社に携帯+腕時計の可能性を聞いた。

「BT Watch」と「i:VIRT(アイ:ヴァート)」の違い

photo セイコーインスツルで実験機のデザインを担当する千田(ちだ)氏。「あくまでも腕時計として、本皮のバンドや金属ケースをこだわって使いました」と、ファッションに対する重要性も話す

 2005年12月、モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)において「BT Watch」という規格が誕生した。Bluetoothを搭載する時計のための規格で、すでに実用化されているBluetoothのハンズフリープロファイル(HFP)を拡張したものだ。

 BT Watchを利用すると何ができるのか。腕時計と携帯電話を常時接続するための標準手段「BT Watch TR-006 ver.1.0」では、同規格に対応する携帯電話との情報のやり取りが可能になり、音声着信やメール着信時に相手の電話番号やメールアドレス、発信者名などを表示できるようになる。

 ここで意外に思うかもしれないが、7月7日に発売される「i:VIRT」にはメール通知の機能はない。現在発売されている携帯電話がBT Watchに対応していないためであり、シチズン時計では商品認知を図るため、あえて現状のHFPのみで商品化を行ったという。そのためi:VIRTは、Bluetoothロゴ認証の観点からはハンズフリー分野の商品となり、(実装はされないが)内部的にはマイクとスピーカー機能が搭載されているものと見られる。

実験機開発の目的

photo SIIの開発した実験機。有機EL周辺以外は研究室にあった部品や技術を組み合わせて作成したため、本体サイズについてはやや大振りとなっている

 「BT Watchに対応した携帯電話が存在しないので、Symbian OSを採用するボーダフォン端末を使って、シリアルポートプロファイル(SPP)上でこの機能を使えるようにしています」と、ゼロから開発した苦労を話すのはセイコーインスツル ウェアラブルマーケティング部長の田中淳氏。新しい製品を提案する場合には、プレゼン資料を何枚も持っていくより、きちんと動作する実物を見せたほうが話が早いというのが、実験機を作った経緯だ。

 田中氏は「BT Watch実現のポイントはBluetoothにあるが、逆にBluetoothであるがゆえの問題が3つある」という。1つ目は、国際規格でもあるBluetoothは、Bluetooth SIG(Special Interest Group:Bluetooth規格における非公開/非営利の産業団体)で認められる必要があるということ。つまり一部の団体が勝手に規格を拡張することができない。2つ目は、携帯電話に実装されないと使えないということ。早期から携帯電話メーカーを巻き込んで一緒に開発していく必要がある。

 そして3つ目は、SIGで認可されてもキャリアが採用するとは限らないということ。これはBluetoothが登場してからかなりの時間をかけて、ようやく現在の状況に至ったことからも推測できるように、ビジネスモデルが確立していない無線通信の分野では、互いの思惑が複雑に絡み合う。また、キャリアの足並みも揃うとは限らない。メーカーやキャリアを説得するためにも、実験機の開発は必要不可欠であったわけだ。

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