金属製ケースからの決別――“G'zOne”WIN対応で得たもの、失ったもの 開発者に聞く「G'zOne W42CA」その2(2/2 ページ)

» 2006年07月11日 12時00分 公開
[青山祐介(聞き手:吉岡綾乃),ITmedia]
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増えていくアンテナをどこに収めるか

 これまでに紹介したTYPE-Rからの進化は、目に見える形なので分かりやすい。しかし、今回のWIN化にあたっては、アンテナをどこにどのように搭載するかという、目に見えない部分の問題が非常に大きかった。

 従来はメインアンテナとGPSのアンテナを組み合わせて、ヒンジ部の裏側に配置していた。しかしWINではメインアンテナとサブアンテナの2つが必要であり、さらにGPSのアンテナも入れなくてはならない。しかしW42CAでは、microSDをはじめ数多くの機能が追加され、それをよりコンパクトに収めなければならないため、ボディ内にアンテナを入れる余地はなかった。

 そこで、TYPE-Rで採用していた、ユーザーが自由に取り外し可能だった“カスタマイズプロテクター”をやめて固定式にし、その中にアンテナを1つ入れた。さらにもう1つのアンテナは、唯一残っていたサイドキーとイヤフォン端子を構成するためのわずかな隙間に収めた。そこは非防水エリアであり、「ここにアンテナを入れるのは苦肉の策だった」と開発設計本部ハード設計グループの金親昌宜氏は言う。

 「アンテナが増えたからサイズが大きくなったということがないように設計しました。サイズに影響しないように配慮しつつ、これまで以上の性能を出すというところは達成できています。ユーザーにとってアンテナは見えない部分ですが、携帯電話は無線機なので、性能面では非常に重要な部分ですから」(金親氏)

アンテナの収納場所は、G'zOneをWIN化するにあたって最大の問題だったという

 こうしたWIN化に伴うアンテナの開発と平行して、ケースの素材にも変更が加えられた。G'zOne W42CAの基本的な構造はTYPE-Rと同じだが、背面側のケース素材は金属から樹脂に変わった。WINの場合、TYPE-Rのようなマグネシウム製のケースを使うと、電波が干渉してしまいアンテナの設置場所がかなり限られてしまうのだ。TYPE-Rを開発する際にも、将来的にはマグネシウムのケースをやめなければならない、と問題視されていて、実はTYPE-Rを発売する以前から、ケースを樹脂に代えることを前提に素材の選定を行っていたという。

 「今後色々なモデルを展開していく上で、ワンセグやFeliCaなどの機能を載せようと思うと、アンテナはどんどん増えていきます。そのときケースにマグネシウムを使っていると、アンテナを配置できる場所が限られてくる。今後を考えると、やはりマグネシウム(を外装に使うことに)はどこかで見切りをつけなければならないのです。今回はかなりのチャレンジではあったのですが、あえて樹脂に変えました」(開発設計本部機構設計グループの安田晋也氏)。

眺めるたびに“こんなところに、こんなものが”という発見を

 端末全体に金属パーツを使用して質感を上げることが難しかったこともあり、W42CAでは細かなところにいろいろなこだわりが隠されている。例えば、サブディスプレイとメインディスプレイ、ダイヤルキーの周囲に配されたローレット加工が挙げられる。サブディスプレイの周囲では1.1ミリピッチ、メインディスプレイとダイヤルキーの周りは0.8ミリピッチとわずかに細かさを変えてある。「眺める時間の長い内側のほうに、より高い緻密さを与えて、繊細な感じになるよう仕上げています」(開発本部デザインセンターの杉岡忍氏)

サブディスプレイの周り(左)とダイヤルキーの周囲(右)とで、ローレット加工の半径の大きさを変えている

 また、サブディスプレイを縁取る銀色のパーツもそうだ。ガラス越しのため気付きにくいが、前作では樹脂の成形品だったものが、今回はアルミのプレス品になり、質感が向上している。こうした小さなこだわりも随所にちりばめられている。

 「端末を眺めるたびに『こんなところに、こんなものが!』という発見があるのがG'zOneのいいところだと思っています。デザイン的には、ホントにいろんなところにこんなことやっているんだ、というのを目白押しで突っ込んでいるつもりなんです」(杉岡氏)

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