SH702iSでもう1つ注目したいのが、SH902iSに迫る基本機能の高さを持つにもかかわらず、本体の厚さが21ミリに抑えられている点だ。特に背面の先端部分は、赤外線ポートやインカメラ、受話部のスピーカー、LEDなどを収めつつ、先端に行くに従って薄くなるデザインを採用しており、デザインと設計の両面でとても困難な部分だった。
外観の基本デザインを担当した通信システム事業本部 デザインセンター 副主任の神垣尚彦氏は、「薄さを実現するための細かな調整がとにかく大変でした。とにかく余分な肉を落とし、絞り込む努力をしています。やはりSH902iSに迫る機能を搭載していても、武骨で分厚くては意味がありません。スリムでスマートでなくてはならないと考えました」と振り返る。ダイヤルキー面の周りの部分にシルバーのモールを配し、レイヤー構成のデザインを採用したのも本体を薄く見せるための工夫だ。
「単純に薄くするだけでは強度が落ちてしまいます。しかしヒンジ部などの大きな力がかかる部分や、採用した素材そのものの強度も確保しなくてはなりません。必要な強度を維持しつつ薄型化しなくてはいけないという、相反する要素を両立させるのが難しい課題でした。最終的には、薄さと強度のどちらも妥協せずに仕上げることができました」とは通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 第2技術部 主事の川畑松吾氏の弁だ。「インカメラなどが位置するディスプレイ側の先端部は、よく見ると内側が液晶面より出っ張っているのが分かると思います。このあたりも薄型化のために苦心したポイントです」
ベールビュー液晶に迫る高い機密性を確保するプライベートフィルタも、新たな取り組みとして注目してほしいと通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 第1技術部 主事の西信孝氏は言う。「プライベートフィルタは、画面に表示するデータそのものを操作するのではなく、ディスプレイのコントローラ部分でコントラストを下げる処理を行っています。ですからメールを書いているときだけでなく、あらゆるシーンで1ボタンでフィルタをかけることが可能です」
さらに、ベールビュー液晶は、液晶パネルの上にさらに1枚ベールビューのための液晶を追加することになるので、液晶の明るさという点ではベールビューを搭載していないSH702iSの方が優れている部分もあるという。同氏は「ベールビューを搭載しない方が薄くなるので、ボディを薄型化しつつプライバシーを確保するために、プライベートフィルタの採用は欠かせなかったのです」と話してくれた。今後もベールビューとプライベートフィルタは、機種の特性やターゲットに合わせて、またユーザーの反響も見つつ使い分けていくという。
一見、SH902iSをスペックダウンしただけかのように誤解されることもありそうなSH702iSだが、ここまでで紹介したように、実は若者向けの“実用的な高機能”を目指し、細部にまで配慮が行き渡っている。
通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 第1ソフト開発部 主事の長谷川恵介氏が「ソフト部分は共通化されている部分もありますが、快適に使っていただけるよう、もっさり感をなくすためのチューニングは常に行っています。7シリーズだからといって妥協はしていません」と話すように、ソフトウェアの部分も新モデルが登場するたびに進化している。
商品企画の天野氏は「ボディカラー各色に合わせた壁紙やテーマなども用意しています。外観からソフト、グラフィックに至るまで、外から見えるところのこだわりをぜひ見ていただきたい」と、購入後も楽しめるSH702iSの魅力も紹介してくれた。そして同じく商品企画の田氏は、「シャープの端末はハイスペックというイメージがあり、どうしても女性から見ると男性向きの端末というイメージが強いようです。しかしSH702iSは、女性にもぜひ使っていただきたい」と話す。
「カラーリングも女性が持っていて違和感のない色ですし、大きな液晶でメールが打ちやすかったり、きれいに撮影できるカメラを搭載していたりと女性にとって魅力的な部分も多いはずです。よく電車の中などで液晶にのぞき込みを防止するシートを貼っている人を見かけますが、SH702iSならプライベートフィルタがあるのでシートを後から付ける必要もありません」
SH702iSは、単なる廉価モデルではない、シャープ製端末のDNAを受け継いだコストパフォーマンスの高いスタンダード端末ということがよく分かる。開発陣の自信のほどからも、SH702iSの完成度の高さがうかがえる。
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提供:シャープ株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年8月31日