HSDPAに対応したNEC製の高速FOMA「N902iX HIGH-SPEED」。その速さは理論値で、下りが最大3.6Mbps、上りが384Kbpsだ。実際の利用シーンで“どれだけ高速なのか”を動画でお見せしよう。
ロボットやSF映画のキャラクターを彷彿とさせる近未来デザインが話題の「N902iX HIGH-SPEED」。HSDPAに対応した初の端末は、どんな経緯で誕生したのか、ユニークな新モデル開発の背景を開発陣に聞いた。
PCインターネットの世界でナローバンドからブロードバンドに移行したときのことを思い出してほしい。大容量の画像の表示やコンテンツのダウンロードでずいぶん待たされていたのが、ブロードバンドでは瞬時に済むようになり、インターネットを利用する上でのストレスが大幅に軽減された。一度、この快感を味わったら「もう、ナローバンドには戻れない」と実感したはずだ。
2006年夏、携帯電話の世界に似たような変化が起ころうとしている。ドコモがいよいよ次世代通信方式のHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)を開始するのだ。
このHSDPAに対応する日本初の高速FOMAとして登場するのがNEC製の「N902iX HIGH-SPEED」。HSDPA最大の特徴は、受信時の最大通信速度が大幅に向上する点だ。具体的には従来FOMAの受信最大速度が384Kbpsであるのに対し、HSDPAでは一気にその約10倍となる3.6Mbpsの通信速度を実現する。送信時の通信速度も最大64Kbpsから最大384Kbpsに高速化された(いずれも数値は理論値)。
N902iX HIGH-SPEED(HSDPA) | N902iS(W-CDMA) | |
---|---|---|
最大受信速度(下り) | 3.6Mbps | 384Kbps |
最大送信速度(上り) | 384Kbps | 64Kbps |
ベストエフォート方式で提供されるため、電波状態などによって通信速度は変化するが、「FOMAハイスピードエリア」と名付けられたHSDPAエリア内であれば、これまでのFOMAよりも高速な通信環境下でデータ通信を行える。HSDPAでは使う帯域こそFOMAと同じ5MHzだが、変調方式などを最適化し、電波の利用効率を向上させて通信速度を高速化しているため、“高速な分、余分に帯域を使う”ということが起こらない。そのため、同じ電波状態でもおおむね従来のFOMAより高速になるのだ。
HSDPAの高速通信は実際のところ、どのような利用シーンでどのくらい速いのか。さまざまなデータ通信の利用シーンで実際の速度を計測し、従来FOMAと比較した。
音楽データを1曲まるごとダウンロードして楽しめる「着うたフル」。1曲あたりのファイルサイズは2Mバイト前後とかなり大きく、従来のFOMAでは1曲ダウンロードするのに分単位の時間がかかることもある。これをN902iX HIGH-SPEEDでダウンロードすると、おおむね十数秒程度でダウンロードが完了する。
2000Kバイトの「着うたフル」ダウンロード時間
|
N902iX HIGH-SPEEDの登場に合わせ、iモーションがダウンロード/ストリーミングともに最大5Mバイトに拡張された。ダウンロードタイプのiモーションは、従来FOMA向けiモーションの最大500Kバイトから10倍のファイルサイズに拡張されたことになる。HSDPAでダウンロードすると、5Mバイトiモーションのダウンロードに要する時間はおおむね30秒以内で済み、従来FOMAで500Kバイトiモーションをダウンロードするのと同程度だ。ダウンロード時間はそのままに、より高品質で長時間の動画を楽しめるようになるわけだ。
4850Kバイト「iモーション」ダウンロード時間
|
大容量コンテンツの利用時だけでなく、日頃よく利用するiモードメールの送受信や、iモードサイトへのアクセスも、従来のFOMAに比べてスピーディだ。データ送受信量の多い通信対応のiアプリゲームなどでも、高速な通信がメリットになる。N902iX HIGH-SPEEDなら、高速通信を生かした新しいリッチコンテンツからふだん使いのiモード利用に至るまで、ストレスのない通信環境で楽しめるのだ。
日中の同じ時間帯、同じ場所でN902iX HIGH-SPEEDと従来FOMAのN902iSでiモードのトップメニューを表示した。FlashのメニューもN902iX HIGH-SPEEDのほうが素早く表示される
FOMAでは、最大500Kバイトの画像や動画をiモードメールに添付して送信できる。従来FOMAで送ると送信に1〜2分かかっていたのが、N902iX HIGH-SPEEDなら20秒程度で送信できた。メガピクセル画像を送ったり、モブログに写真をアップロードしたりするのにかかる時間が大幅に軽減される。
日中の同じ時間帯、同じ場所でN902iX HIGH-SPEEDと従来FOMAのN902iSで475Kバイトの画像を送信した。N902iX HIGH-SPEEDは25秒程度で送信を完了したが、N902iSでは1分40秒かかった
PC向けサイトにアクセスできるフルブラウザも、HSDPAで快適さがぐっと増す。最近のPC向けサイトは、ブロードバンド接続を前提にしたリッチなサイトも多く、有線ブロードバンド接続なみの高速通信が可能なN902iX HIGH-SPEEDでは、従来FOMAに比べてサイトの表示にかかる時間がずっと短い。NECのN902iX HIGH-SPEED紹介ページを閲覧してみると、従来FOMAが50〜60秒程度かかるのに対し、N902iX HIGH-SPEEDは25秒程度ですみ、その速さを体感できる。
フルブラウザ「わいわいモバイル N902ixページ」読出し時間
|
PCなどに端末をつなぎ、端末をモデムとしてインターネット接続に利用する場合も、高速なHSDPAのメリットを享受できる。Webサイトにアクセスする際の受信速度は日中の都心部でも500〜800Kbps程度、深夜にいたっては2Mbpsを超えるなど、モバイルブロードバンドの名にふさわしい速さだ。また送信速度も従来FOMAでは最大64KbpsとISDNなみだった速度が、HSDPAでは384Kbpsに向上。実測でも384Kbpsに迫る速度で利用可能だった。これだけ速度が向上すれば、大容量ファイルを添付したメールの送信もスムーズだ。
モデム利用時の受信速度
|
|
N902iX HIGH-SPEEDは、W-CDMAとHSDPAのいずれのエリアでも利用でき、両方の基地局がある場合はHSDPAに優先でつながる。FOMAハイスピードエリア以外の場所では従来FOMAと同様の、最大受信速度384KbpsのW-CDMAを利用できるため、これまでFOMAを利用していたユーザーが不都合を感じることはない。パケット料金も従来のFOMAと同じ各種パケット割引プランが適用され、もちろんパケット定額プランのパケ・ホーダイも利用できる。ただし、内蔵のフルブラウザ利用時や端末をモデムとして利用する場合は、パケ・ホーダイが適用されない点には注意が必要だ。
エリアを気にせず使えるのは便利だが、やはり着うたフルや、5Mバイトに拡張されたiモーションなど、大容量コンテンツをダウンロードする際には、HSDPAエリアなのかどうかをチェックしたいところ。そんなときには、N902iX HIGH-SPEEDにプリインストールされる「FOMA通信環境確認」iアプリを起動すれば、今いる場所がハイスピードエリアなのかどうかを把握できる。
なお、ハイスピードエリアの展開ロードマップについてドコモは、「サービスイン当初は東京都23区内をハイスピードエリアとし、2007年3月末までに全国の人口カバー率を70%まで拡大する」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:日本電気株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年9月29日