2年後のことはドコモにも分からない──ケータイデザインの今WPC TOKYO 2006(1/2 ページ)

» 2006年10月23日 12時50分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 ケータイが持つデザインの意味とは――WPC TOKYO 2006で「生活や文化の質を高める“カタチ”とは? デザインはケータイをどう変えるか」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストとしてNTTドコモの増田智子氏、宣伝会議編集長の田中里沙氏、デザインスタジオS 代表の柴田文江氏、富士フイルム デザインセンターの堀切和久氏らが登場。モデレータ−はデザインプロデューサーの小牟田啓博氏が務めた。

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ダイヤルキーはこれからも残るのか?

photo Kom&Co.代表取締役/デザインプロデューサー 小牟田啓博氏

 ディスカッションに先立ち小牟田氏は、「携帯電話の10キー(ダイヤルキー)は、電話を象徴するものとして記号になっている」と延べ、通話やメール以外の機能が増え、さまざまな側面を持つケータイを今後もユーザーは“携帯=ダイヤルキー”として認識していくのか、興味があると話した。

 さらに小牟田氏は、現在の携帯電話について、機能とデザインが同等に重要な存在になっており、これは車などに似ていると指摘。車と同じように携帯と付き合えるのか、また、携帯のデザインと機能がどうバランスをとって進化するのか、「結論は出なくてもいいし、おそらく出ないと思う」と延べた。

機能か、デザインか──持つ携帯で個性が決まる時代

photo NTTドコモ プロダクト&サービス事業本部 マルチメディアサービス部 マーケティング企画 主査 増田智子氏

 “携帯の進化”という話題を受け、NTTドコモの増田智子氏は、「キャリアの立場として参加してますが」と前置きした上で、新機種を発売するたびに“使うのが難しい”“複雑で使いこなせない”などの意見を聞くと話し、「これまで携帯は進化を繰り返してきたが、本当の進化とは使いやすくなること。これまでの携帯の進化は革新的なのだろか?」(増田氏)と疑問を呈した。また、「既存の簡単な技術を組み合わせるだけで、革新的な進化を遂げる」とし、NTTドコモのキッズケータイ「SA800i」の例を挙げた。

 SA800iは、専用工具がないと外せないバッテリーや、防犯ブザーと同時に自動で音声発呼する機能など、決して高度ではない技術の組み合わせによりセキュリティ機能を高めている。単なる子供向けデザインの携帯ではないため、多くの保護者から支持を得ているとし、「デザインする気持ちでケータイは変わる」と述べた。

photo 宣伝会議 編集長 田中里沙氏

 宣伝会議 編集長の田中里沙氏は、「ある時から、『携帯を見せてもらえますか』と言われるようになった。その人の個性や人となりを知るのに、その人の持っている携帯の機種や着メロで判断するようになったのかもしれない」(田中氏)と自身の体験を延べ、「24時間15センチの近さにあり、体の一部ともいえる」「所有権意識が強くなり、他人にあまり貸したり借りたりしない」などの理由から、車や腕時計のように、人格や個性を表す存在になりつつあるという考えを示した。

 また、携帯電話は視覚・聴覚・触覚すべてを使う新しいメディア特製を持ち、能動的であり受動的でもあるため、ケータイを含む生活環境をデザインするフェーズだとし、「これからは使い方の提案も含めた、広い意味での“デザイナー”の誕生が待たれるのかもしれない」とした。

photo デザインスタジオS 代表 柴田文江氏

 その“デザイナー”代表として参加したのが、デザインスタジオS 代表の柴田文江氏と、富士フイルム デザインセンターの堀切和久氏の2人だ。柴田氏はauの女の子向けケータイ「Sweets」「Sweets Pure」をデザインした経験を「自分はインダストリアルデザイナーの中でも、家電や家具などをデザインするロングライフデザイナー。携帯デザインの依頼を受けた際は意外だったが“セグメントデザインが必要なプロダクトになったんだなぁ”と感心した。実際に携わってみて、その幅広さを実感した」(柴田氏)と振り返り、その難しさを「優秀なクルーを引き連れて、高速道路を目をつぶって飛ばす感じ」と表現。

 多感な年ごろの年齢層をターゲットにしたSweetsのデザイン経験を踏まえて、「“お父さんと同じようなケータイ”にはしたくなかった。でも、Sweetsだけでなく、今や携帯は、機能よりもデザインを優先する存在。腕時計も似ていて、自分と同じ腕時計をしてる人はあまりいないし、貸し借りをすることもあまりない」と話し、田中氏と同様の考えを述べた。

photo 富士フイルム デザインセンター デザインマネージャー 堀切和久氏

 企業に所属するデザイナーであり、また、デザインマネージャーというデザインについての管理職でもある堀切氏は、「携帯について考えたとき、3人の自分がこうささやいた」(堀切氏)とし、「天使の自分は『ケータイは変わらなくていいよ』と思う。悪魔の自分は『ケータイなんか無くなってしまえ』と、まったく新しいツールへ進化してその存在が消えればいいと考える。しかし、大衆である自分は『もっと小さくなったり、四季で色がかわったりすれば面白い』と、いま以上にそのデザインに驚いたり、もっと話題の中心になることを望んでいる」と話した。

 “携帯電話が車や腕時計に近い存在”という考えについては、「喫茶店などの世間話で、ケータイの話題がよく上る。車や腕時計、(堀切氏のデザイン分野である)デジカメについてはあまり話さなくなった」と、常に話題になる存在として、車を超えたかもしれないと延べた。

 さらに、“3人の堀切”の中では「最終的に大衆である自分を支持する。コミュニティツールでもあるし、多くの人が意識する存在つまりケータイはコミューンだ」と、そのユニークな考えを披露した。

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