あらゆる面で「905SH」を凌駕する──アクオスケータイ“2nd Model”への進化開発者に聞く「911SH」(1/2 ページ)

» 2006年11月28日 18時54分 公開
[園部修,ITmedia]

 「ワンセグ=ソフトバンク」を目指すというソフトバンクモバイルの隠し球の1つとして、満を持して発表されたシャープのワンセグ端末“アクオスケータイ2nd Model”「911SH」は、その開発の初期から、初代アクオスケータイ「905SH」を超えなくてはならないという宿命を負っていた。

 人気機種905SHの後継モデルだけに、中途半端なモデルを世に出すわけにはいかない。開発者たちがさまざまな手を尽くし作り上げた911SHに込めた思いを、シャープ通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 主事の奥田計氏に聞いた。

すべての面で905SHを上回る端末を

Photo シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部主事の奥田計氏

 「正直、905SHを開発した当初は、機能的に大きな不満はありませんでした」

 905SHの商品企画も担当していた奥田氏はこう話す。他キャリアの端末より遅いタイミングでの投入だったこともあって、非常に完成度の高かった905SHは、発売後すぐに多くのユーザーからの支持を集めた。しかし、905SHの後継機911SHを企画するにあたり、そこで満足してしまうわけにはいかなかった。そこで奥田氏らがまず目標として定めたのが、初代機905SHを凌駕する携帯を作る、ということだ。

 「手前みそですが、905SHはかなり作り込んでいたので、その次の目標をどこに置くか、という点では難しい部分もありました。ただ、まったく改善すべきポイントがなかったわけではありません。905SHに対するフィードバックやユーザーからの意見なども取り入れつつ、ボディの薄さやディスプレイのサイズ、ワンセグ視聴時間など、あらゆる部分で905SHを超えることを目指しました」(奥田氏)

22ミリは705SHのボディにサイクロイド機構を搭載した厚さ

Photo 911SHのボディの厚さは約22ミリ。905SHから約5ミリ薄くなっている

 911SHが905SHから大きく進化したポイントの1つがボディの薄さだ。905SHでは約27ミリあったボディが、911SHでは約22ミリへと、5ミリも薄型化されている。この約22ミリという厚さは、開発当初からの目標値だった。

 「まずソフトバンクモバイル向けの人気スリム端末、『705SH SLIMIA』のボディに、サイクロイド機構のヒンジを搭載した場合、どれくらいの厚さになるのかを検証しました。すると、約22ミリという数字が出てきた。そこで、911SHの厚さの目標を約22ミリに設定しました」(奥田氏)

 しかし、ダイヤルキー1つをとっても、薄さを優先してステンレス製シートキーを採用した705SHと、チャンネル操作などでキーを多用するため、しっかりした作りのキーを搭載する911SHでは、条件が大きく異なる。さらにワンセグチューナーなど、705SHには入っていないものを組み込む必要があることを考えると、容易に達成できる目標ではなかったはずだ。

 実際、設計や試作を繰り返し、厚さが0.1ミリでも増えて達成が困難な事態が発生すると、その都度緊急対策会議を開き、さまざまな要素を組み合わせて厚さを削っていったという。

 この薄型化の努力は、バッテリーパックを外したところで垣間見ることができる。バッテリーパックは完全な直方体ではなく、小さな出っ張りやへこみがあることが多いのだが、911SHでは端末の規格銘板シールがこのへこみの部分にぴったりはまるようにデザインされている。

 「こうすることで、約0.05ミリ薄くできるのです。ほかの部分でも本当にコンマ1ミリ単位で厚さを削っています」(奥田氏)

Photo 写真では分かりにくいが、バッテリーパックの「このシールを剥がさないで下さい」と書かれた部分のすぐ左の位置で外装シールが重なっており、微妙に段差ができている。規格銘板シール(本体側の型番などが書かれたシール)はこの出っ張りの部分と重ならないように配置され、約0.05ミリの薄型化を実現している

 そのほか、スピーカーを底面からヒンジ部に移したことも薄型化に大きく寄与した。スピーカーは移設によりステレオではなくモノラルになってしまったものの、前面に設置できたことで、ワンセグの音声がより聴きやすくなるという効果もあった。ヤマハのSound Tuning Systemを採用して、音質の向上も図っている。

 また905SHでは、机などに置いた状態でダイヤルキーを操作しようとすると、ボディがくるくる回ってしまうという問題が指摘されていたが、911SHは裏面をフラットにしたうえ、端部に突起を設けて回転しにくい設計にしてある。

薄くしただけではただの“改善品”──大画面化と長時間化も実現

 ボディの厚さを5ミリ薄くしたというだけでは、「すべてを上回る」にはほど遠い。そこで911SHでは、ディスプレイの大型化も実現した。905SHでは2.6インチだったディスプレイが、911SHで一気に3インチになっている。対角線で約1センチほど大きくなったことで、画面の面積は約1.3倍に広がった。

 「ただ、ディスプレイを大型化しつつも筐体のサイズはあまり変わらないようにしました。905SHのボディの横幅は約49ミリでしたが、911SHは約50ミリで、約1ミリしか広がっていません。」(奥田氏)

 このディスプレイの大型化にともない、液晶パネルを背面からだけでなく手前(内側)から押さえつけるような特殊な機構を採用して額縁部分を細くするなど、さまざまな工夫も凝らしている。

 バックライトはより高輝度かつ低消費電力なものに変えており、905SHから約30mAh増えた容量の大きなバッテリーと合わせて、最長で約5時間のワンセグ連続視聴を可能にしている。バックライトは数が1つ増えて明るくなっているのに消費電力は従来より低い。

 ちなみにスペックでは連続録画時間が約4.5時間(1予約あたりの連続録画時間は4時間)となっているが、これはディスプレイをオンにした状態で計測したもの。端末を閉じてディスプレイを非表示にした状態であれば、さらに長時間の録画が可能だ。

 「やはり単純に薄くしただけでは905SHの改善品でしかありません。後継モデルと言うからには、それなりの進化をさせないといけない。大画面化と長時間化は欠かせませんでした」(奥田氏)

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